〈コラム〉雇用維持と採用促進策「部下に刮目(3)」

0

人手不足(13)

「HR人事マネジメント Q&A」第25回
HRMパートナーズ社 人事労務管理コンサルタント
社長 上田 宗朗

前回=4月22日号掲載=の記事にて、大手企業や有名企業では「従業員意識調査(以下:同調査)」を活用しており、その中でも一部企業は頻繁に質問内容を変えて実施するほどだが、主な理由は部下達が如何なる懸案や不満を抱えているかを最も正確に知る手段である為。翻って、小中規模の企業は実施に二の足を踏みがち、その訳は同調査に協力したからといって従業員たちに過度に期待されては困るからというもの。それ故、実施には注意と工夫が伴わねばならないと締めくくりました。

今回は前回の続きとして、同調査を実施する上での「注意と工夫」を説きたいと思います。同調査を行う前に企業側がクリアにしておくべき事として;

(1)従業員にいつどこで答えて貰うか?:これはもちろん、従業員には真摯に回答して貰わねばせっかくの同調査が無駄になることから、宿題として家に持ち帰らせずに会社で行うべきです。即ち給金が発生している就労中に答えさせてこそ真面目に取り組む(答える)と考えるべきですし、賃金が出ない就労時間外に家でさせたところで雇用主側の「ケチ」さを見透かされ、呆れられるか或いはその浅ましさから逆に人心が離れていく原因にすらなるかもしれません。

(2)どれくらいの量の質問を設けて良いか・設けるべきか?:特に制約はありませんが50問までに抑えるべきでしょう。それ以上の質問を設けても集中力が続かず最大の効果が得られなくなってしまうためですが、似たケースにDMVのドライビングテストが挙げられましょうか。また、50問以下ならば1時間(の賃金)で済むはずです。

(3)回数または実施する間隔は?:これがけっこう重要な考察ポイントなのですが、先に述べた通り「従業員たちに過度な期待をされては困る」は、従業員側が同調査の実施を通常行う日常的イベントとは捉えず非日常、即ち非常時イベントと受け止めることから過度な期待もしてしまうわけです。従って定間隔で行うことが望ましいですし、たとえ初めての実施であっても、事前に「よりよい会社にするべく今後もこのような調査を定期的に行っていく予定でいる」ことをアピールしておいた方が良いかもしれません。但し、このようなアピールをするかどうかは真剣に検討されるべき。何故なら皆さんも経験があるでしょうが、ディーラーや航空会社から頻繁に送られてくるアンケ―トの大半にはうんざり気味。従って敢えて「1回こっきり」とするのか「定期的実施」をアピールするのか、また係る「強調度合い」は、全てその時々に考えるべきでしょう。

続く「(4)『設問』の仕方」および「(5)答えさせ方」、それと調査後の雇用主側の振る舞いや従業員側へのフィードバックなどについては次回に取り上げたいと思います。

(次回は6月24日号掲載掲載)

上田 宗朗

〈執筆者プロフィル〉うえだ・むねろう  富山県出身で拓殖大学政経学部卒。1988年に渡米後、すぐに人事業界に身を置き、99年初めより同社に在籍。これまで、米国ならびに日本の各地の商工会等で講演やセミナーを数多く行いつつ、米国中の日系企業に対しても人事・労務に絡んだ各種トレーニングの講師を務める。また各地の日系媒体にも記事を多く執筆する米国人事労務管理のエキスパート。

過去の一覧

Share.