人手不足(37)
「HR人事マネジメント Q&A」第49回
HRMパートナーズ社 人事労務管理コンサルタント
社長 上田 宗朗
今回も前回=5月24日号掲載=に続き「天候不良や災害によるオフィス臨時クローズ」を取り上げますが、前回は、会社がオフィスクローズを決定した当日、従業員側が容易に在宅勤務に変更できるなら誰しもがそうするし、それを以って会社側が従業員管理を出来ていると思い込んでいるとしたなら考えが甘い、更にはもし従業員が災害に遭っていたことを知らずにいたなら監督責任を問われかねない、故に日頃から体制整備しておくことが肝要であると締めくくりました。
この体制整備の意味するところは、いつでも労使間での連絡がつくこと即ち緊急時でも支障なく連絡が繋がること、それに通常の方法で連絡がつかない場合の代替連絡手段の確保はもちろん、更に言えば手順に則った避難訓練つまりは災害を想定したエバキュエーションドリルも実施しておくべきということです。
もう少し細かく説明しますと、OSHA(労働安全衛生局)は会社に対して火災訓練(ファイアドリル)は義務付けてはいませんが、効果的なEAP(エマージェンシーアクションプラン:緊急時行動計画)を維持する一環としての避難訓練実施を強く推奨しています。このEAPとは言葉の意味そのままに、火災や自然災害、化学物質の漏洩、武装した侵入者など、職場での緊急事態においてどのように会社が対応し、どのように従業員を安全に避難させるかを文書化したもので、OSHAにより一部に対しては作成が義務付けられ、大半の会社に対しては推奨されている安全対策なのです。
ところで上述の避難訓練に話を戻しますと、建物の種類・リスク度合・その他の要因によって異なりはするものの、従業員を守る備えとして訓練は少なくとも年1回、リスクの高い環境ならばより高い頻度で実施するべきであると前出OSHAは指導しています。加えて在宅勤務者に対しても「自宅での緊急時対応」を周知することが望まれ、これには安全ガイドブックの配布、避難マニュアルの整備、避難先の確保(下見)、(会社などとの)通信手段の確認などの自主点検が含まれます。
ご想像の通り、避難訓練を怠ったり災害で就労中の従業員や関係者に被害が出れば会社も管理責任を免れないかもしれず、従って、ビルに入居していればビル管理者主導の定期的な避難訓練の機会を活かせば良いでしょうが、自社ビルや独立したオフィスまたは敷地を有するなら行うべき定期訓練と位置づけてください。
(次回は7月26日号掲載)
〈執筆者プロフィル〉うえだ・むねろう 富山県出身で拓殖大学政経学部卒。1988年に渡米後、すぐに人事業界に身を置き、99年初めより同社に在籍。これまで、米国ならびに日本の各地の商工会等で講演やセミナーを数多く行いつつ、米国中の日系企業に対しても人事・労務に絡んだ各種トレーニングの講師を務める。また各地の日系媒体にも記事を多く執筆する米国人事労務管理のエキスパート。