どのような構造の企業体にするかは各ビジネス独自の事実関係や状況によって変わる
美容室、レストラン、または衣料品店の多くは、一つの企業体の下で自立したビジネスとしてスタートします。ビジネスの成功に伴い、小売店舗の数を増やそうということもよくあります。そのような時、ビジネスオーナーが単純に新しい小売店舗を最初の店舗と同じ企業体の下で開店したため、単独の企業体の下で複数の小売店舗を経営されている場合があります。もしこれらの単独の企業体に経営されている小売店舗のうちの一つが、財政難になったり甚大な債務に直面したら、同じ企業体の傘下にある他の店舗にも悪影響を与えてしまいます。このような場合、たった一つの店舗の経営不振が、ビジネス経営全体を崩壊させかねません。この事態は、各小売店舗を別々の企業体の下で経営すると、一つの店舗の債務が他の店舗に影響を与えないので、避けることができます。また、好業績店舗の資産が、悪業績の店舗の債権者の対象となる恐れも避ける事が出来ます。従って、複数の小売店舗を経営する場合、各小売店舗を個別の企業体の下で経営をする事を考慮するとよいでしょう。
複数の企業体の下で複数の店舗を経営するビジネスモデルは、追加の経費、記録保管業務、簿記や経理の要件を伴いますが、全体的に見れば、それによって得られる利点と保護を考慮すると追加の負担を上回ると言えるでしょう。しかし、その複数の企業体の下で各店舗の経営をするビジネスモデルの利点と保護を確実に保つには、各企業体の日々のビジネス経営が独立している事等の各企業体の形式を守っていかなければなりません。各企業体が独自の記録、簿記等を保管しておらず、日々のビジネス経営が独立していない場合、複数の店舗が同じ企業体に経営されていると見なされ、複数の企業体で複数の店舗を経営するビジネスモデルの利点と保護を失ってしまう可能性があるからです。
ビジネスの拡張や小売店舗の増設を検討している場合、税理士、フィナンシャル・アドバイザー、ビジネス・アドバイザー、弁護士といったプロフェッショナルに事前に相談し、各小売店舗につき別個の企業体を起こす事が可能かどうか、また得策であるかどうかを相談するとよいでしょう。厳密にどのような構造の企業体にするかということは、各ビジネス独自の事実関係や状況によって変わってきます。
(弁護士 マリアン・ディクソン)
(次回は9月第1週号掲載)
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