〈コラム〉情報収集の大切さ

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永野・森田公認会計士事務所 日下武「ビジネスのツボ」 第93回

先日、日本でセミナーをしてまいりました。内容は会計関連ではなく、米国の日本食の現状や輸出について説明するものでしたが、海外進出を考えている多くの方々に集まっていただき、とても情熱を感じました。

米国で日本食ブームが起きているというのは、日本国内でも取り上げられているようですが、現状についてはなかなか伝わっていないようです。

例えば米国に居住している方はご存知かと思いますが、米国では日本食レストラン=日本人オーナーとは限りません。ニューヨークでは日本からの進出が増加傾向にあり、日本食レストランの日本人オーナー比率は上がってきていますが、それでも3割ほどと言われています。

郊外にいくと日本人オーナー比率は1割くらいになります。それほど日本人オーナー以外の日本食レストランが多いということは日本国内ではあまり知られていないようです。

また、日本のニュースの映像で白人が生魚を食べている姿を見て、米国でも多くの白人が生魚を注文するイメージがあるようですが、確かにお寿司好きの白人にサーモンやマグロは人気のようですが、白人全体で見ると生魚を好む割合は低く、生魚なしのロール寿司を注文する傾向が高いと思います。

会計士として日本の外食チェーンの米国スタートアップをお手伝いすることも多く経験してきました。日本国内のニュースで、米国ではラーメン1杯1500円以上でも行列ができ、低価格の外食チェーンも米国で新しくブランディングすれば高価格で勝負ができるなど成功例が多く紹介されており、日本よりも簡単に利益が出るとイメージしている企業が多いようです。

さらに、ある情報によると1000人に対するレストランの数が東京は6・2件であるのに対して、ニューヨークは1・4件といわれているので競争が少ないということも米国進出を促進しているようです。

その比率の理由には、ニューヨークは規則が厳しく、日本よりもレストラン業に対する規定が多く開業がしにくいということもあるかもしれません。工事の進み具合、各種ライセンス、チップ制度、不動産契約、就労ビザの問題、のれん代など、数々の商習慣の違いや困難を乗り越えなければなりません。日本で人気の外食チェーンも就労ビザのコントロールは難しく、日本から職人さんを連れてくるのが厳しく苦戦しているようです。

私の経験から感じることは、米国進出前にしっかりと現地に足を運び、時間をかけて情報収集した企業が、米国でも成功していると思います。

(次回は12月第2週号掲載)

〈プロフィル〉 日下 武(くさか たけし) 永野・森田公認会計士事務所NJ拠点マネージャー。大手日系食品商社での営業経験を生かし、顧客の立場になって、全体的なビジネス、会計、税務相談を受けている。メーカーからレストラン、リテーラーマで、幅広く顧客を持つ。

ウェブwww.nagano-morita.com/ Tel:201-363-0050 E-mail:tkusaka@nagano-morita.com 2125 Center Ave., Suite 104, Fort Lee NJ

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