英語プログラムの大学への進学

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メリットとデメリットを確認したい

「在米親子にアドバイス」日米の教育事情
米日教育交流協議会(UJEEC)・代表 丹羽筆人

最近、英語プログラムを設置している日本の大学への進学を希望する高校生が増えています。英語プログラムは多くの留学生を受け入れ、グローバル化を図る目的で設置されています。少子化による18歳人口の減少が進む中で学生数を確保としたいという大学側の意向や、国を挙げて留学生の増加を促進しようという政府の方針もあり、ますます増加しています。両親または父母のいずれかが日本人であったり、日本に親族がいたりするような高校生だけでなく、両親とも日本人でなくても、日本の文化、特にアニメやゲームなどに興味を持っているような高校生も目を向けています。また、数年前までは、駐在員のお子さんで両親が帰国後もアメリカに残りたいという理由でアメリカの大学に進学した高校生もいましたが、そのような高校生も英語プログラムの大学を選択するようになっています。

この背景として考えられるのは、アメリカの大学の授業料が高額なことです。この20年間で約3倍に増額し、例えば、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の2023年度の授業料は、州内学生で13,401ドル、州外学生は43,473ドルです。一方、日本の大学の2023年度の授業料は、国立大学が535,800円、私立大学は平均971,664円で、円安傾向の現在の為替相場で換算すると、かなり安いことが分かります。

また、英語プログラムの大学には、このほかにもいくつかのメリットがあります。
一つ目は、入学試験です。帰国生入試のように学科試験や小論文などが課されず、アメリカの大学と同様に書類選考のみなので受験勉強の負担がありません。中には面接を実施したり、筆記試験を行ったりする大学もありますが、少数です。
二つ目は、入学時期がアメリカの大学と同じく秋(9月~10月)だということです。アメリカの大学に進学する友人と同様に、現地校卒業後の夏休み明けに大学生になれます。帰国生入試を受験する場合は、入学が翌年の4月になります。
三つ目は、英語プログラムでは英語で行われる授業のみを受講し卒業できますので、日本語力に不安があっても問題ありません。一方で、大学によっては日本語で行われる授業を受講することもできるので、バイリンガル教育を受けやすい環境にありますし、生活面では日本語を使う機会が増え、日本語力の向上も期待できます。

しかし、デメリットもあります。
一つ目は、英語プログラムといえども、日本人の先生が多い大学もあり、学生さんから聞いた話では、中には英語がそれほど流暢でなく、授業内容が理解しにくい先生もいるということです。
二つ目は、大学内でのコミュニティーが留学生中心であり、日本人学生との交流があまりないという大学もあるということです。英語での授業を行う教室が日本語での授業を行う教室とは別棟であったり、寮も留学生のみということもあるようです。
三つ目は、日本の企業・官公庁・団体での就職は厳しいかもしれないということです。英語プログラムの大学は秋入学なので、卒業時期は5~6月です。日本の企業・官公庁・団体の入社・入庁時期は4月ですので、間に合いません。企業や官公庁などでは、新人研修などもあり5~6月までは待てないそうです。そのため、大学側では早期卒業制度を設け、3年半で卒業し、4月に間に合うようにしているようですが、この制度を利用している学生は少なく、多くの学生は卒業の翌年の4月に就職しているそうです。また、日本語力が不十分で就職に苦戦している学生もいますし、アメリカに帰国して就職活動をしたものの、就職先がなかなか決まらないということもあるようです。

このように英語プログラムの大学には、メリットやデメリットがいくつかありますので、これらを十分に理解して進学することをお勧めします。

(写真提供:名古屋国際中学校・高等学校)

丹羽筆人【執筆者】にわ・ふでひと 河合塾在職後に渡米し、北米の補習校教員・学習塾講師を歴任。「米日教育交流協議会(UJEEC)」を設立し、「サマー・キャンプ in ぎふ」の企画・運営、河合塾海外帰国生コース北米事務所、名古屋国際中学校・高等学校、名古屋商科大学北米担当、サンディエゴ補習授業校指導教諭を務める。
◆米日教育交流協議会(UJEEC)
Website:www.ujeec.org

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