コアがうまく機能している状態は「伝達がうまく行っている状態」

0

コアのほんとのお話(2)

〈コラム〉瓜阪美穂「理学療法士が教えます」 身体が痛い本当の理由 【第15回】

前回、「身体のコア(体幹)がうまく機能している状態」というのは「身体のいろいろな部分がタイミングよく、連携しあって上手に動いている状態」を指すことをお話しました。難しそうに聞こえますが、日常の小さな動作も全てこの繰り返しです。

例えば、椅子に座ったまま目の前にあるコップを持ち上げたい時。持ち上げたいと思った瞬間、手を動かす前に脳は背中にすでに座った姿勢を保つための情報を送ります。次に手、肘、肩などに情報が伝わり、コップへ手が伸びます。この時、先に背筋の準備が出来ていないと、腕の重みにつられて胴体が倒れてしまいます。

脳は今までの経験をまとめた上で、見た目からコップの重さや距離などを計算し、持ち上げるために必要な司令を出します。10グラムの紙コップ用の筋肉を使うのか、1キロの鉄入りマグカップ用の筋肉を使うのか。思ったより重かったり、軽かったりすると、脳の情報と筋肉に必要な「力の入れ具合」がずれてしまい、うまくいかなかったりします。実際に持ってみたら重かった!という場合、「重い!」と手が認識し、脳にその情報が伝わります。そして脳がその情報に対応し、手の力を増やす上に、背筋や体幹の筋力も強くするように送信し直されます。この新しい情報に対して背筋の調整が出来ていないと、10グラム用の筋力が1キロの重さに対応できず、腰の怪我に繋がります。コアがうまく機能した時点でいろいろな日常の動きが始まります。スポーツをするためだけでなく、楽に生活を送れるようにコアを鍛えていきましょう。

瓜阪美穂〈筆者プロフィル〉
瓜阪美穂(うりさか みほ)  理学療法博士、整形臨床スペシャリスト。ニューヨーク州立大学ビンガムトン校を卒業後、南カリフォルニア大学理学療法博士課程を修了。ブロードウェイミュージカルのダンサーの理学療法士としても活躍中。米国の理学療法により、自身の身体に興味をもち、正しい動作を生活に取り入れることを目的に治療や指導を行っている。
★身体に関する皆様からの質問も受け付けています。
【ウェブ】https://omptny.com/ja/

〈コラム一覧〉

Share.