米国へ入国する外国人、特にH―1B、L―1といった就労ビザやB―1短期商用ビザ保持者は、米国の空港で厳重な検査を受ける傾向にあります。中でも、H―1Bビザ、L―1ビザ保持者で、実際の雇用主の所在地ではなく、その派遣先で就労するケースがその検査の対象になっています。
ニューアーク国際空港とフィラデルフィア国際空港では、就労内容への疑問や雇用主の所在地と訪問先が異なるといった理由で、H―1BやB―1ビザ保持者が入国を拒否されたという事例がありました。これらは、外国人就労者の雇用主の所在地外での就労規制を強化する米国国家安全保障省の取り組みによるものです。国家安全保障省は最近、前述のような派遣先での就労者を含むH―1Bビザ就労者との強固な雇用関係を証明するよう企業に求める新たなガイダンスを作成しました(次項をご参照ください)。
よって、雇用主の派遣先で働く、もしくはビジネスを行う外国人渡航者は、米国の空港でのより厳重な入国審査に向けて準備しておく必要があります。H―1B、L―1ビザ就労者は、入国審査官へ雇用の内容や自身の業務、勤務地、給与などについて解答できるようご準備ください。また、H―1Bビザ就労者は、派遣先を含む勤務地を明記した労働状況申請(LCA)フォームを携行されるといいでしょう。
B―1ビザを保持する一時渡航者は、米国でのビジネスの内容を明確に答えられるようにしてください。また、 訪問目的を明確に記した日本の雇用主からの書面や訪問先からの訪問目的を記した書面、日本の名刺などを携行してください(B―1短期商用訪問者についての詳細は「週刊ビジネスニュース2009年6月29日号」の当コラムをご参照ください)。
移民局がH―1Bビザ申請へ新ガイダンス
証拠提出の強化とその基準
10年1月8日、米国移民局はH―1Bビザを申請する雇用主へさらに強固な証拠書類の要求を盛り込んだガイダンスを発表しました。新たなガイダンスにより、派遣先で勤務、自営業主、事業主、契約社員のいずれかに当てはまる外国人就労者がH―1Bビザのカテゴリーに該当するかどうかが厳重に審査されます。
また、同ガイダンスでは、H―1Bビザの請願者である雇用主は、従業員との正当な雇用関係がビザの有効期限内に存在し、従業員の雇用を管理する権限を有することを示さなければならないとしています。この証明は、特に従業員が派遣先で勤務する場合に必要となります。これにより、自営業主、雇用主の所有権を持つ従業員、契約社員、派遣社員のいずれかに該当するケースのビザの請願は、雇用関係が証明できないという理由で今後却下されることになるでしょう。
米国移民局は、派遣先で勤務するH―1Bビザ就労者について、「派遣先ではなく」、請願者である雇用主が従業員の雇用を管理する権限を持たなければならないと考えます。しかし、従業員が雇用主のクライアントに派遣社員として派遣され、派遣先から直接管理される場合、義務付けられている雇用関係は存在せず、H―1Bビザは承認されません。
また、H―1Bビザの従業員が自営業であったり、雇用先企業の所有権を持つ場合、雇用主の企業として従業員の就労を管理するといったような、従業員本人とは異なる別の存在であるということを証明しなければなりません。こういったH―1Bビザのケースが審査過程で厳重な調査の対象となり得ます。
これらのケースにおいては、従業員の就労を監督、指揮、査察し、彼らの雇用を終了させるなど、外国人従業員を管理する雇用主の権限を証明する書面を提出しなければなりません。書類の例は以下の通りです。
■雇用の契約条件を詳細に明記した雇用同意書
■採用通知
■雇用主と非雇用人の間で交わされた契約書
■非雇用人の業務内容や指示書
■組織図
■その他
(弁護士:リチャード A. ニューマン)
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(「WEEKLY Biz」2010年2月27日号掲載)