アーティスト・林世宝「チリも積もれば芸術に」第13回
日本の震災を通して、いかに生きるかをあらためて考えました。
死ぬまでの人生には誰にでも遺憾があり、完璧な人生はない。友達が困難な時には助け合う。天災は無情だけれど、人間には愛がある。死者の方々の冥福を祈ると共に、生きている私たちは今を大事にしよう。夢があるときには行動しよう、後悔しないように。そして、孝行したい時に親はなしとならないように、両親に孝を尽くそう。
「これからどうしようか」と避難所で嘆く祖父母に、高校生の孫が「大丈夫、これからは僕達の時代、僕達が頑張るから」と語り、卒業式では「絶対に日本はまた立ち上がります」と述べたと聞きます。なんと心強い言葉でしょう。台湾の応援者達は、この言葉で十分に日本の気持ちが伝わったと言います。震災から2カ月、台湾からの義援金はさらに増え、160億円を超えました。この数字は、「新生する日本を信じ、応援し、共に歩いている」という姿の表れでもあるのです。
「英雄造時勢、時勢造英雄」戦後の日本をリードした企業家などが、時代を作った英雄であるなら、ヤフーやフェイスブックの創設者はコンピュータ時代が作り出した英雄。今の日本に必要なのは、時代を作っていく英雄であり、力強い若者たちの言葉に日本の日の出を予感し、絵にしてみました。題は「日の出(いずる)国 日本」。
作品は二層になっており、背面に地震の傷跡を残しています。前面の円は日本国で、それを取り囲む小さな丸い円は、応援する世界中の国々。芽が出て花が咲くように、円の色が薄い緑から徐々に濃く赤くなり、明るい日の出を迎えます。矢印は方向のシンボルであり、新しい大地から立ち上がり、これまでよりも高く、素晴らしい日本になっていくことを願った作品です。
(次回は6月18日号掲載)
〈プロフィル〉リン・セイホウ 1962年台湾生まれ。日本に留学中に日展、日仏現代美術展に出展し数々の賞を受賞。その後、渡米し、96年NY大学大学院修士課程を修了。NY現代美術展メディア賞、アジア傑出アーティスト賞などを受賞。世界中から素材を集める、ハート集結シリーズの代表作には「智恵の門(愛知万博)」、「ラブツリー(20万のおしゃぶり)」がある。NY在住。【フェイスブック】