集夢計画24「伝書鳩に夢を託して(2)」

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アーティスト・林世宝「チリも積もれば芸術に」第29回

伝書鳩が飛んでいく風景。高雄市での展示は3月17日まで開催(高雄市駁二藝術特區蓬萊倉庫B10 キュレータ:謝慧青Hui-Ching Hsieh w4.khcc.gov.tw/2013DCCF/)

高雄市文化祭のため、先月初めより台湾に来ています。最近は、映画制作を目標にした集夢計画のための関連作品を展開し、ニューヨークから日本、そして今年舞台は高雄へ。作品名は「文字向前跑・向上飛(文字は前に走り、上に飛ぶ)」で、会場でのインストレーションと、伝書鳩を飛ばす行動アートを催しました。

3カ月前からインターネットで鳩の飼い主に協力を呼びかけ、台湾入りしてからは電話で参加を広めました。台南のある伝書鳩愛好家のお陰で、最終的に数十名の所有者が合計約400羽の鳩を貸してくれることになりました。彼によると、血統が良いレース鳩は200万から500万円もするのだそうです。台湾では伝書鳩レースが盛んで、500万から1000万円の賞金がかけられます。愛好家はそれだけ熱心で、大事に育てた鳩を他人に簡単に貸し出す訳にはいかないのです。それでも彼は、私のアート解説に熱心に耳を傾け、協力の輪を広め、自分の鳩70羽(1000万円相当)を無償で貸してくれました。1月26日、絵と文字で飾り付けた専用のトラックに乗り込み、午前3時、台北を出発。途中数箇所の所有者を回って鳩を借り受け、約250羽を高雄まで運びました。南方面からは、前述の彼自ら運転し、数箇所を経由して約150羽を運んでくれて、27日当日は大勢の観客が見守る中、400羽の鳩が愛と夢を乗せて大空に飛び立ちました。

「社会は冷酷、人間も冷たい、鳩は一生懸命飛んで戻ってくる優しい存在」と彼は言いますが、私はこの企画を通じて、母国台湾の人々の温かさ、人情味に触れ幸せでした。大切な人への愛、地球の平和、自分の夢などを伝書鳩に託し台湾全土に運んでほしいという主旨のもと、大勢の人が無償で協力してくれました。集夢計画は私のアートに関わる人間ドラマ。伝達方法の昔と今、空路(伝書鳩)、道路、網路(インターネット)をアートに盛り込み、私の夢は更に膨らみました。

(次回は4月13日号掲載)
林世宝

〈プロフィル〉リン・セイホウ 1962年台湾生まれ。日本に留学中に日展、日仏現代美術展に出展し数々の賞を受賞。その後、渡米し、96年NY大学大学院修士課程を修了。NY現代美術展メディア賞、アジア傑出アーティスト賞などを受賞。世界中から素材を集める、ハート集結シリーズの代表作には「智恵の門(愛知万博)」、「ラブツリー(20万のおしゃぶり)」がある。NY在住。【フェイスブック

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