〈コラム〉「理香先生の歯のアドバイス」第5回

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失った歯について

隙間は確実に残った歯に影響 早めに治療を始めよう

おそらく皆さんは周りに歯が1本もしくはそれ以上ない人を見たことがあるでしょう。親知らずの場合を除いて、歯を失ったために人工歯を必要とする理由はたくさんあります。どうやって歯を補うのか、その状況に適した方法がいくつかあります。
人工歯を付ける一番の理由は、歯を失くす前と同じように食事や会話の機能を保つことです。治療の観点からは、一般的にその歯をどのように失ったかは問題になりません。歯を失う理由には、神経治療が不完全のため根の先に炎症を起こしている場合、重度の歯周病で治療不可能と医師が判断した場合、経済的な理由から抜歯しか選択肢がない、あるいは怪我などにより歯が折れた場合などが挙げられます。歯が1本またはそれ以上ない場合、通常口の中に大きな隙間ができます。この隙間は6カ月前後の短期間にはおそらく問題となりませんが、ゆっくりと確実に残った歯に影響を与えていきます。
どこか歯が1本ない場合、欠損部分の前方にある歯は後ろ向きに、後方にある歯は前方に、そしてその上の歯は下向きにそれぞれずれていきます。この状態になると歯並びが変化したり、噛み合わせが悪くなったりするでしょう。こうした経過をたどってしまうと、歯の矯正を含めた集中的な治療なしには抜歯の後すぐに行える治療法がなくなってしまいます。全ての歯を正しい位置に戻した後、歯周病などの進行がない状態で、抜歯後の様々な治療法が可能になるでしょう。
失った歯を補う一般的な方法として、インプラント、部分ブリッジ、部分床義歯の三つがあります。今日では自然の歯の状態に近いという理由で患者の方がよく選ぶのは初めの二つの方法です。通常、インプラントは失った歯を天然の歯とほぼ同じ状態にするもので、周囲の歯に負担を掛けません。部分ブリッジは、たいてい欠損部の前後の歯を削り落とすことが必要になります。削った二つの歯に冠をかぶせ、その間に人工の歯を装着します。これらの治療法は、1本の歯の補綴についてほぼ同等の料金が掛かります。
三つ目の部分床義歯は、1本の歯よりも複数の歯の隙間を埋めるのに適しています。人工の歯が歯の欠損部分の歯茎の上に収まるまで、周囲の健康な歯にワイヤーや金属のばねで固定されます。部分床義歯は就寝時に外して歯茎を労らなければなりません。ただし部分床義歯を外した時に間違って捨てたりしてしまう可能性があるので、注意深く取り扱う必要があります。
どのような治療法を選んでも、成功と最善な結果をもたらすポイントは「待っているよりも早めに治療を始めること」です。歯科医から歯の病気や怪我によって抜歯の必要性を診断された場合は、様々な歯の補綴法を話し合うようにしてください。
Rika Furukawa〈プロフィル〉古川理香(ふるかわ りか) メリーランド大学ボルチモア校歯学部卒業。AGD、ADA、NYSDA会員。ニューヨークで歯科医として「Rika Furukawa, DDS, LLC.」開業。

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