アーティスト・林世宝「チリも積もれば芸術に」第62回
私のアート人生を振り返ると、地元台湾での芸術高校から始まり、3年間でデッサン、水彩、習字、墨絵、陶芸、彫刻、油絵、版画を学習。その後、日本の名古屋芸大で日本画と版画(シルクスクリーン)を勉強した後、フリーで活動しながら8年を日本で過ごしニューヨークへ。NYUの大学院で銅板と立体造形を専攻し、卒業後現地に残り現在に至ります。「アートとは何?」との問いに「千変万化」と答えながら私の作風も変化してきました。絵画を原点に、平面や立体では思想を表現しきれないときは外に出て、社会を眺め人と話し、そこで得た真実を行動アートで表現します。
ペニーパーティーは「希望のツリー」プロジェクトの一環。素材となるボールは1年半で2万5000個を超えて目標達成。次に重要なのが活動運営費。「1ペニー、1ホープ」をキャッチフレーズに、昨年5月にコネチカットで、パーティーの名付け親でもあるシャイニングさんが開いてくれたのが最初でした。資金集めもありますが、集まってくれた人たちと対話しながら生まれる心力(心の中の力)、心意(気持ちの力)を集めるのが行動アートの趣旨。オリンピックに野球が復活すると発表された時の喜びから始まり、ネバーギブアップのスポーツ精神、愛と平和などを語り合い、皆が一つになれる貴重な場。行動しながら表現するアートは国境、人種を超えて人々の希望や真実を伝えられると信じています。
一部メディアでは、2020年の東京オリンピックの会場にこのツリーが展示されると報道されていますが、いまだIOC(国際オリンピック委員会)の許可待ちで決定ではありません。みんなの気持ちを点灯することがなぜそれほど難しいのだろうと考えながら、プロジェクトは坂道を登り続けています。
(次回は11月第2週号掲載)
〈プロフィル〉リン・セイホウ 1962年台湾生まれ。日本に留学中に日展、日仏現代美術展に出展し数々の賞を受賞。その後、渡米し、96年NY大学大学院修士課程を修了。NY現代美術展メディア賞、アジア傑出アーティスト賞などを受賞。世界中から素材を集める、ハート集結シリーズの代表作には「智恵の門(愛知万博)」、「ラブツリー(20万のおしゃぶり)」がある。NY在住。【フェイスブック】
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