集夢計画74「毎日がEarth Day II」

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アーティスト・林世宝「チリも積もれば芸術に」第79回

「F1(Future No.1)いいねカー」とコンパニオンのF1ガール=2015年11月(会場:台北市庁舎)

「F1(Future No.1)いいねカー」とコンパニオンのF1ガール=2015年11月(会場:台北市庁舎)

前回=5月15日号掲載=に続き、地球環境を考える作品をご紹介します。

4年かけて集めた携帯電話2万5000個を素材にした車の作品「F1(Future No.1)いいねカー:偉大な発明と矛盾」の完成は2015年。最先端テクノロジーの象徴であり続ける携帯電話と車。人間の英知を駆使した発明は偉大で誇らしいものですが、地球の未来(Future)を考える時、進化は自然に優しいものであってほしいと思います。自然との共存を第一(No.1)に、人間にも自然にも悪影響を及ぼさない発展への願いを込めた作品です。

携帯電話は1台数百ドルから高いものでは1000ドルを超える高価なものですが、どの家庭にも使わなくなったものが何台も転がっているという話を聞いたのが制作のきっかけ。高機能な新機種を手に入れれば、使わなくなったものは思い出(メモリー)の詰まった高級なゴミと化す。故に─偉大な発明と矛盾─。

これは車も同様。未来の車を考えると、石油に頼らず、天然資源を燃料に、人の命を脅かすものを発生させず、故障は自ら直すような考える車ができたらいいなと思います。車体と携帯電話を借りて、科学技術の発展への期待と、大自然と人間との共存を同時に発信した作品でした。

毎年この時期になると、水害や山火事などの自然災害のニュースが毎日のように流れ心が痛みます。日本や台湾は小さな島国で、地震や台風は毎年のことで慣れているからこそ、自然を畏れ、敬う精神が昔からあります。仏教の教えにも「敬天地」、「尊重天地万物」とあり、自然を守り、物を大切にする考えは特別なものではなく、平和を望む気持ち同様自然な心の表れです。世界中の人がこの尊い精神に習い、地球のことを思う行動を続ければ、おのずと自然は応えてくれるはず。私は「毎日がEarth Day」の気持ちで、今日も制作を続けます。

(次回は9月第3週号掲載)

林世宝〈プロフィル〉リン・セイホウ 1962年台湾生まれ。日本に留学中に日展、日仏現代美術展に出展し数々の賞を受賞。その後、渡米し、96年NY大学大学院修士課程を修了。NY現代美術展メディア賞、アジア傑出アーティスト賞などを受賞。世界中から素材を集める、ハート集結シリーズの代表作には「智恵の門(愛知万博)」、「ラブツリー(20万のおしゃぶり)」がある。NY在住。【フェイスブック

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