「これからの日本」を考える
NY歴史問題研究会主催で共同講演会
ニューヨーク歴史問題研究会が、元航空幕僚長の田母神俊雄氏と西村眞悟・衆院議員を招き、「『これからの日本』を考える―国家の自立と安全保障問題―と題した共同講演会を15日、ニューヨークのザ・ユニバーシティークラブで開いた。同会の高崎康裕会長が、現在の日本の情勢などに触れた後、2人の略歴を紹介、西村議員の講演から始まった。〈写真はいずれも=15日、ニューヨーク(撮影:鈴木貴浩)〉
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西村議員は「現在は時代の転換点」とし、クリミア情勢に世界の注目が集まる状況から、日本への圧力が高まる状況は約160年前と同じだと語った。日本の生き残りを懸けて改革しなければならなかったのが、約160年前は幕藩体制で、今回は戦後体制そのものだと西村議員は説いた。
また、第二次世界大戦後の世界の体制を提示した「大西洋憲章」の理念について、義務教育で教えている内容は「ウソ」と語り、「戦後の世界秩序を掲げて戦ったのは日本だ」と明言した。その上で、日本が戦争に敗北した理由にも迫った。
西村議員は明治天皇、昭和天皇の「詔書」を取り上げ、国民と苦難を共にする天皇のあり方を語った。
また、日本国憲法は「学術的に無効」であるとし、憲法と軍隊を元に戻すことが主権回復だという。「軍隊を回復し、天皇をいただく共同体であるという自覚なしに国際情勢に対処できない」と断言した。
講演の最後に、「ここの皆さんのまなざしは日本国内よりも真剣であると感じさせていただいた」と述べた。
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次に登壇した田母神氏はユーモアを交え、近況を話した後「日本を取り戻すために10年頑張る」と語ると場内から拍手が起こった。
まず国際政治について、「今は軍事力をバックに威圧し、自国だけがもうかるようにするもの」と解説。軍事力については外交交渉のために必要とし、そのために「均衡」でなければならないとした。「日本は『軍事力を使いません』と交渉の場で言ってしまうので、日本の言うことは聞かなくても良いということになる」と説いた。
また、自衛隊は米国から自立しなければならないが、戦闘機、ミサイルシステムなどが米国製なのでできないという。「軍が自立しないと国家の自立はない」と断言する田母神氏は、「国産の戦闘機を作らないとダメ」と語った。
戦後、日本は国を守ることを真剣に考えてきたことがないと憂い、冷戦が終わってから、弊害が出てきたという。米国の要求を取り入れ、法整備をしてきたが日本型社会がどんどん壊れてきたと説いた。また、次々と改革をしてきた20年だったが、「良くなったものはゼロ」と言い切った。
日本は情報戦争に負けたとも語り、「中国の軍事力は強い」という例を挙げ、細かく説明した。また、集団的自衛権行使を容認する閣議決定がされたが、事例を議論するのは「中国に作戦計画の手の内を通知しているようなもの」と批判した。攻撃されると、米国に反撃してもらわないとならないが、米国は自国の利益になるときにしか反撃しないという。そうした現状でも「日本は軍事的に強くなると侵略戦争を起こす」といった「誤った歴史観」は自民党幹部にもあると批判すると会場から笑いがもれた。
「自分の国は自分で守るという方向に日本もいかなければならない」と力説した。
福島を訪れた田母神氏は「放射能」にも触れ、これも「危ない」との情報戦にあおられているとした。
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講演後、活発な質疑応答が行われ、会場を満席にした講演会は盛況のうちに幕を閉じた。
(「WEEKLY Biz」(ニューヨーク)2014年7月26日号掲載)