監督・ナレーションを務めたドキュメンタリー映画が
「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2017」で入選
ニューヨークと東京を拠点に活動する写真映像作家・松井みさきさんが監督・ナレーションを務めたドキュメンタリー映画「mit Kenji und Keisuke – Brooklyn, New York -(ケンジとケイスケと – ブルックリン ニューヨーク – )」が、アジア最大の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2017」のジャパン部門に入選、6月に東京と横浜で上映された。
同作品は、ニューヨークのブルックリンで暮らす、ヨーロッパ生まれのギタリスト・ケンジとケイスケを、監督が自ら撮影・インタビューしたもの。国際的なバックグラウンドをもち、エネルギーの塊とも言えるニューヨークでごく自然体で生きる彼らとの交流から人生のヒントを学んでいく過程を捉える。同作品は、映画祭の公式審査員である大林宣彦・映画監督による授賞式のスピーチで取り上げられ、監督が出演者の友人という立場で撮っている視点や、国際的な若者の交流が世界平和への希望を感じさせる等の好評価を得た。
監督の松井さんは写真家でもあり、映像に漂うナチュラルで透明な空気感は、写真にも共通している。自然に見えるが、実は様々な場所で撮影しながら常に同じ空気感を出すことは、作り手としては難しい。感覚的ではあるものの、戦略的に考えられているからこそ、統一感が生まれるのだ。
それは、松井さん自身のバックグラウンドに関連する。写真家になると決めてニューヨークに渡る前、東京と大阪の広告会社でマーケティングを担当していた。消費者インサイト(消費者の本音)を把握し、広告スポンサーの立場も鑑みながら、伝えるべきメッセージがどうすれば人々に伝わるかを追求してきた。“伝える側”と“観る側”のことをとことん考え抜くことが身についているのだ。
写真家としてのスタートは他の人より遅いと自覚していた。フルタイムのアートスクールへは行かず、自力で作品を撮り、人脈を広げてチャンスを掴んだ。コンテストなどの応募書類を効率良くまとめたり、出会った人への迅速な連絡など、自分からアプローチすることを決して怠らなかった。全て社会人経験が役立っている。アートスクールを卒業していないことの焦りや不安はあったが、「私の作品は人との出逢いや人生経験から生まれてくるので、あまり気にしなくなりました。まわりにロールモデルはいませんでしたが、自分なりのやり方でやってきました」と話す。こうして少しずつ、コンペや賞の入選など実績を積んでいった。
写真家を続けていくうちに、人との交流の中で自然と生まれたのが映像作品だった。ニューヨークではジャンルを超えてアーティストと知り合う機会が多く、気が合うとコラボレーションしようという話になりやすい。ダンサーやミュージシャンだと必然的に動画になる。「作品づくりも仕事も、人ありき。何をやるかよりも、誰とやるか。『この人を撮りたい』『この人と一緒に何かやりたい』というのが私の中で最大のモチベーションです」と語る。映像作品ではこれまでに3点制作したが、全て国際的な映画祭の入選を果たしている。
国際的な制作活動をしていく中、桜の写真が国際的な写真コンテストで入選したり、琴を現代的に演奏する安藤準さんとのコラボレーション作品がヨーロッパの映画祭に入選したことで、これまでは意識していなかった自分のなかの「日本のDNA」に気付いたという松井さん。「海外に住み、日本の四季の美しさや、日本人独特の思いやり・やさしさに気づきました。今後それらを表現し、世界に発信したいと思っています。日本と海外をつなぐような長編映画も撮りたいです」と今後の活動に意欲を見せた。
◎information
ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2017 (SSFF & ASIA 2017)
1999年にショートフィルムを日本に紹介するため、米国俳優協会(SAG)の会員でもある別所哲也を創立者に「アメリカン・ショート・ショート フィルムフェスティバル」として東京・原宿で誕生。2004年に米国アカデミー賞公認映画祭として認定され、若手映像作家の登竜門として知られている。また、アジア発の新しい映像文化の発信・新進若手映像作家の育成目的から「ショートショート フィルム フェスティバル アジア(SSFF ASIA 共催:東京都)」が2004年に誕生。現在、2つの映画祭を「SSFF & ASIA」と総称して開催。映画祭としてはこれまでに延べ30万人を動員。19年目を迎えた今年は「cinemaTIC! cinemaTEC!」をテーマに、世界140以上の国と地域から集まった約9000本の作品の中から、約250作品が選出・上映された。www.shortshorts.org
〈profile〉まつい・みさき misaki matsui
写真映像作家(写真家・映画監督)。神戸生まれ。日本での会社員経験を経て、2008年に写真家になるためにニューヨークに渡る。日米の数々の写真展やアーティストプログラムに参加。講演も行う。ミュージシャン、ダンサーなど他のジャンルのアーティストとのコラボレーションも活発に行っており、2013年より映像制作も開始。初監督作「White sea」がレインダンス映画祭、脚本・監督を手がけた短編映画「KASUMI」がモナコ国際映画祭に入選。ドキュメンタリー映画「mit Kenji und Keisuke – Brooklyn, New York -」が、「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2017」のジャパン部門に入選。すべての作品を通して、共通のテーマ「no moment without hope (希望のない瞬間はない)」を持ち、人々に希望を思い起こさせることを使命としている。現在、ニューヨークと東京で活動中。
ウェブサイト:www.misakimatsui.com(オフィシャル・英語) www.misakistudio.com(日本語)
インスタグラム:www.instagram.com/misaki_matsui(ポートレート) www.instagram.com/misaki_photographer(東京風景)