5月14日・チェンバーオペラ「道成寺」、女性の怨念にコメディー組み合わせた意欲作

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古典の登場人物に2人加えたハーモニー
カーネギーの舞台に鳴り響く

世界中から集まる緑内障の研究者を支援する活動の傍ら、音楽プロデューサー・作曲家としても精力的に活動するリヨ・斎藤さんのオリジナルチェンバーオペラ「道成寺」が5月14日、カーネギーホールのワイルリサイタルホールで上演される。

「道成寺」の英語脚本と楽曲を手掛けたリヨ・斎藤さん

修行僧・安珍と真砂庄司の娘・清姫の悲恋を描いたストーリー「道成寺」はもともと1000年以上前に存在したも清姫の。女性の怨念がテーマの悲劇で、能・歌舞伎・長唄・義太夫・浄瑠璃などさまざまなスタイルでこれまでに上演されている。斎藤さんはここにコメディーの要素を組み合わせ、英語脚本をオリジナルで書き上げ、楽曲も全て自らが書いた。同作品は自身2作目のオペラとなる意欲作だ。

40代で音楽活動を始めた斎藤さん。ニューヨークに長く住み、15年にわたってオペラ鑑賞をするうちにその魅力のとりことなり、40歳を過ぎてからジュリアード音楽院のイブニングクラスに通い始めた。音楽理論を4年、作曲を4年、指揮を2年、ピアノと西洋音楽も勉強した努力家だ。

「道成寺」のリハーサル風景。清姫の衣装の着物は京都からの特注。絵柄は手描きのもの(提供写真)

今回の公演には「これから伸びていく野心家をそろえたくて」才能のある若い演奏家たちを選んだ。

「アリアは一人一人妙味のある歌を歌う。特に清姫のアリア、リベンジソング、『5日過ぎたのに』、そして最後のクライマックスでの壮絶な怨念のアリアも聴きどころです」

古くからのストーリーでは登場人物が安珍と清姫の二人で進行したが「それだと、オペラという形式で演奏するには物足りないのですよ」と斎藤さん。

登場人物にソプラノ、テナー、メゾそしてバリトンの4人を構成させるとオペラらしくなる。最後には4人のハーモニーが舞台を鳴り響かせる。カーネギーのワイル・リサイタル・ホールの音響効果は抜群。その聴きどころを存分に盛り込んだ。ピアノとクラリネットの編成で、ペンタトニック・スケール、5音の音階を特にクラリネットに取り入れ、かつ要所要所にアンサンブルの繊細さとダイナミックを掛け合わせた、日本的な要素も魅力。

チケットの売上げは全て、マウント・サイナイ病院緑内障基金・リサーチ部門(ドクター・ロバート・リッチ設立)へ寄付される。同団体での活動は斎藤さんにとってライフワークであり、2015年より自らバイス・プレジデントも務める。斎藤さんは08年と11年にもカーネギーホールでのコンサート後に1万ドルの寄付を行っている。

◆公演情報◆
New York Glaucoma Research Institute Benefit Concert
(PRESENTED BY NEW YORK GLAUCOMA RESEARCH INSTITUTE)
「チェンバーオペラ『道成寺』」

会場:カーネギーホール・ワイルリサイタルホール
日時:5月14日(火)午後7時
音楽・脚本:リヨ・斉藤
指揮者:ルーベン・ブルンデル
チケット:50〜120ドル
チケット購入:https://bit.ly/2XU5cI6

〈あらすじ〉
安珍は修行僧。5日間の修行に参加するため出掛けるが、日が暮れてきたので清姫の家に宿を乞う。若くてハンサムな安珍に一目ぼれした清姫は、安珍の部屋に忍び込み、二人は一夜を過ごす。翌朝、安珍は修行後の再会を清姫に約束し、再び旅路に出る。ところが、障子越しに見えた鈴の姿にひかれ、安珍はこの日、鈴の家に宿泊し、鈴と一夜を過ごす。翌朝、鈴にも修行後の再会を約束し旅路に戻る安珍。熊野本宮神社での修行が始まると、老僧が安珍の乱れた生活に気付き、忠告。安珍は改心して、清姫にも鈴にも会わずに帰宅する。そのころ待ちくたびれた清姫が魔法の鏡で安珍と鈴の浮気に気付き、復讐(ふくしゅう)に向かう。鈴にも復讐を呼び掛け、共に安珍の下へ向かうが、鈴は鏡に映らない清姫が魔物であることに気付き、女中の高子にメモを残す。高子は鈴を救うため、二人を追い掛け…。安珍と清姫の運命はいかに。

(2019年5月4日号掲載)

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