〈コラム〉厳重な注意を要する銀行保証付小切手の調達

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紛失/盗難に遭うと、届出から最低90日は資金へのアクセスが否認される可能性が高い

日々の個人的費用や業務運営のための常規的支払いには、個人小切手や業務小切手を使用するのが一般的です。しかし時には、不動産購入の支払いや商用リースの保証金のような、特別な私用又は業務支払いをするために、銀行保証付小切手(cashier’s check 又は official bank check)が必要になることがあります。

小切手が紛失/盗難に遭った場合、その小切手の支払いを停止するため、直ちに支払銀行に届け出る必要があります。小切手の支払い停止指示は一定期間有効ですが、時間の経過と共に小切手が古くなり支払銀行が支払いを認めなくなるまでは、通常必要に応じて更新や延長をすることができます。このような紛失/盗難小切手の場合、支払い要請の提示があるまで、資金は支払人の銀行口座に留まり、支払人が利用することができます。

前述の仕組みは、銀行保証付小切手には当てはまりません。銀行保証付小切手は受取人への支払いが保証される形態なので、銀行保証付小切手が発行されると、資金は直ちに支払人の銀行口座から引き落とされます。銀行保証付小切手が発行された後に紛失又は盗難に遭った場合、支払銀行は通常その小切手が未処理であると事が確認出来るまで、支払人が小切手の資金へのアクセスが長期間拒否される場合があります。支払銀行は資金を支払人の口座に戻すまで特定の時間枠と手続きを定めているからです。

もちろん、銀行保証付小切手が紛失又は盗難に遭った場合も、直ちに支払銀行へ届け出なければなりません。その場合、宣誓した上で損失宣言を行うのが一般的です。通常、銀行保証付小切手に対しては支払い停止指示を出すことができず、未処理小切手は支払銀行の支払い対象となります。しかし、損失宣言が提出されており、少なくとも銀行が紛失/盗難の通知を受けていれば、紛失/盗難小切手を提示された時に銀行が支払いを拒否する可能性が高まります。

もし銀行保証付小切手が紛失/盗難に遭うと、資金は既に支払人の口座から引き落とされており、紛失/盗難届のおよそ90日後までは支払人の口座に戻ってこないため、特に小切手が高額の場合、支払人がキャッシュ・フローの問題を抱える可能性があります。資金が戻ってくるのは支払銀行へ必要書類が提出され、最低90日間提示された紛失/盗難小切手への支払いがされてなく、その小切手が未処理のままの場合のみです。

銀行によっては補償契約又は担保資産に基づき、支払人が紛失/盗難小切手の資金を直ちにアクセス出来る場合もあります。しかし、補償契約をするためには、もし銀行が紛失/盗難小切手が提示され、支払いを行ってしまった場合でも、支払人がそれをカバーするに十分な額の担保資産を有している必要があります。これは多くの人にとっては複雑ですぐには利用できない、不適切なオプションです。

このように、銀行保証付小切手は、万一紛失/盗難に遭うと、届出から最低90日は資金へのアクセスが否認される可能性が高いため、銀行保証付小切手を調達する必要がある場合は取り扱いに厳重な注意が必要です。

(弁護士マリアン・ディクソン)

(次回は6月第1週号掲載)

〈今週の執筆事務所〉Miki Dixon & Presseau 法律事務所
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(お断り)本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。法的アドバイスが必要な方は弁護士・法律事務所へ直接ご相談されることをお勧めします。

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