オレンジカウンティ倫理法人会 ギラム真理子会長
〈インタビュー〉
日本で6万7000社が加盟する経営者団体・倫理法人会の米国初の支部として、2017年に「南カリフォルニア倫理法人会」に続いて設立した「オレンジカウンティ倫理法人会」。会長のギラム真理子さんは不動産仲介業を営み、米国に多数の支店を展開している。今回は真理子さんに生い立ちや経営などのお話を伺った。
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真理子さんが「The Gillam Group」を創立したのは約10年前。同社は日本人を含む米国居住者や、日本人の非米国居住者を主な対象として、住宅・商業物件の売却と購入、投資物件のテナント管理(委託)、住宅リース、駐在員仲介サービスなどを行っている。夫のティムさんと共同経営、実妹の香代子さんもスタッフである「家族経営」。オレンジカウンティを本社に、サンディエゴ、ロサンゼルス、ハワイと広く展開している。
CA退職後ダンス留学経てLAの出版社に勤務
大阪生まれの真理子さんは、関西学院大学在学中に数千人の応募者の中から、全日本空輸(ANA)の客室乗務員(CA)の試験に合格。働きながら大学も卒業するが、1年余りで結婚を機に退職する。そして1年未満で離婚。「若気の至りですね。夫婦は自分を映す鏡という倫理の教えは、今ならよく分かります」と振り返る。そしてこれを「いい機会」と考え、24歳で渡米する。
ダンス留学からロサンゼルスの出版社に勤務し、再婚し2人の子供をもうけるも再び離婚。この時に前職の縁で、大手日系企業で社用機のCAの職を得る。その時のパイロットが現夫のティムさんだった。数年後に結婚し2人そろって退職。ティムさんはグーグルに、真理子さんはアップルの当時の最高経営責任者(CEO)、スティーブ・ジョブズ氏が所有する飛行機でCAの職を得る。ジョブズ氏の採用基準は厳しいと言われていたが、自己アピールが激しい米国のCAが多い中、一歩引いてもてなす日本の接し方が気にいられ、初のフルタイムとして採用された。
渡米直後に興味を持ち始めた不動産業
不動産業は、渡米してすぐに興味を持ち始めた。ロサンゼルス・タイムズ紙日曜版の不動産セクションが好きで常に熟読。物件・資産・投資に興味があり、ローンを組む方法やクレジットの構築方法などを考えていた。「アメリカンドリーム=物件(家)でした。20代のうちに物件を買おうと思っていました」(真理子さん)。出版社に勤めながら、実家が営むカメラのコレクターアイテムなどの販売事業を手伝い、資金をためてその夢を実現させた。同時に不動産ライセンスも取得する。
2度目のCAに区切り不動産仲介業として独立
そしてCAの仕事も一区切りついたころ、真理子さんは不動産仲介業として独立し、数年後にティムさんも不動産業の経営に参加。互いに子供がいる状況のため、家庭の時間を充実させたかった。「家族経営だからけんかしてもそれを仕事に持ち込めない。それでも一緒に仕事できる環境は楽しいです」と話す。
倫理の考え方を学び業績アップ
自由な時間が多いと思われる不動産エージェントだが、「とんでもない。きちんと仕事をしないとお金にならない仕事です。サボれないし、ショートカットもできない。初めは苦労しました」と真理子さん。しかし倫理の考え方を学ぶにつれ、業績も上がっていったという。
倫理の教えは米国のビジネスの説とも共通点が多かった。倫理では朝活の重要性を教えているが、「米国の不動産業でトップ営業と言われる人は朝型という定説がある。不動産で成功するのはライセンス保持者の2%くらいだが、周囲を見ても定説は当てはまる」と真理子さんは見る。また、家族も仕事に関わる真理子さんにとって「人をコントロールせず、自分をコントロールすれば周りも変わる」という倫理の考え方に惹(ひ)かれた。
多くの日本人に物件持つ良さ伝えたい
「12歳ごろからカリフォルニアかハワイに住みたいと思っていました」という真理子さんは、子供のころからの夢を、米国で家を持つという夢とともに実現した。今後について尋ねると、「皆さんが物件を持って良かったと思えるように、この仕組みを一人でも多くの日本の方にも伝えたい。日本では今や物件の価格は上がらない状況ですが、人口が増え続けるアメリカでは、安定して家賃収入を得ることができると思います」(真理子さん)
(2018年9月15日号掲載)