〈コラム〉在宅勤務でエグゼンプトのメリット失せ問題浮上

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ワーク・スケジュールについて(3)

「HR人事マネジメント Q&A」第3回
HRMパートナーズ社 副社長及びパートナー 上田 宗朗

前回=6月26日号掲載=に続き、今回は「ミスクラシフィケーション問題がただいま浮上している自宅勤務継続問題とリンクし、如何に強く露呈するに至ったか」を取り上げます。

ミスクラシフィケーション問題は、何も今に始まった問題ではなく、前回のコラムでも取り上げましたが、20年前から連綿としかも全ての州で企業の大小を問わずに起きてきております。理由は言わずもがな、企業側が「残業代を計算するのが面倒だから」「残業代を支払いたくないから」に尽きるのですが、但し、この問題が露わになるのは、例えば、能力不足や不品行による警告書を発した時、解雇を告げた時など、決まって労使の関係が悪化した時です。

では何故に労使関係が良好な時には現れないのか─。それはエグゼンプトにカテゴライズされた従業員はノンエグゼンプト従業員のように時間に左右されないからです。ノンエグゼンプトにカテゴライズされた従業員については、企業は、残業代支払いから免れることが法律上できない為、自ずと就労に係る時間管理を厳しくせざるを得ません。一方のエグゼンプト従業員は、時間による給与支払いではなく能力による給与支払いゆえ、例えば、遅い出勤・長いランチ時間・早い退社…、延いては(職務上不要であれば)出社すらしなくて良いのです。従って、本来であればノンエグゼンプトにカテゴライズされるべき従業員が雇用主をしてエグゼンプトにカテゴライズされたとしても、従業員側にも時間管理の窮屈さから逃れ、就労中でも比較的自由に振る舞えるとのメリットが生まれるからです。残業をしたのに残業代が支払われない問題はあるとしても、日常ほとんど残業をしていないならばエグゼンプトの長所だけを享受できることにもなり得ます。このような企業の光景は米系日系問わず今尚常態化しており、小規模企業で家族的な人事管理を好む所長さんがおられる企業ならば猶更のことと捉えても良いかもしれません。

原因は、日本から出向して来られた親会社の駐在員がFLSA(Fair Labor Standard Act)─公正労働基準法と呼ばれる法律─を理解把握していない事から起こっており、且つ「全従業員をマネジャーの位にしておけば残業代支払いは不要」との日本的発想がそうさせている原因であることも明白です。

それが昨年のパンデミック発生により、何ら準備もできないまま従業員をして在宅勤務に移行せざるを得なくなった今日、上司はこれまでのように従業員の仕事ぶりを間近で見られなくなってしまい、職務遂行具合と相俟ってマイクロマネジメントがちで時間管理も厳しくせざるを得なくなるに至る。そうなれば当然乍らエグゼンプトとしてカテゴライズされた従業員─実際はノンエグゼンプト従業員であるべき─達は、エグゼンプトのメリットが失せてしまい、「では、間違っているクラシフィケーションを是正せよ」と迫るは必定ということになり、斯くして、良い関係であった時には労使双方がうまく利していたミスクラシフィケーションの問題が危うい形で露呈することになるわけです。

(次回は8月第4週号掲載)

上田 宗朗

〈執筆者プロフィル〉うえだ・むねろう 富山県出身で拓殖大学政経学部卒。1988年に渡米後、すぐに人事業界に身を置き、99年初めより同社に在籍。これまで、米国ならびに日本の各地の商工会等で講演やセミナーを数多く行いつつ、米国中の日系企業に対しても人事・労務に絡んだ各種トレーニングの講師を務める。また各地の日系媒体にも記事を多く執筆する米国人事労務管理のエキスパート。

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