海外での学校生活を継続するための方法とは?
「在米親子にアドバイス」日米の教育事情
米日教育交流協議会(UJEEC)・代表 丹羽筆人
海外勤務が終了し帰国することになったが、子どもは現地校への通学の継続を希望しているのでどうしたらよいかという相談を受けることがあります。日本から来て間もない頃は、英語も理解できず苦労することが多い現地校での学習ですが、年月が経ち、慣れてくることで居心地が良くなることはあります。英語力のさらなる向上や異文化理解をさらに深めるには、海外生活は長い方が良いでしょう。しかし、海外生活が長くなればなるほど、日本語力の伸び悩みや帰国後の日本の学校生活への適応が難しくなることも考えられます。また、それは、学齢が上がれば上がるほど、及ぼす影響が大きくなります。いずれ帰国しなければならないということであれば、その時期も十分に考えて決められると良いでしょう。
一方で、帰国時期によっては日本の高校や大学への進学が不利になるため、現地校への通学を継続した方が良いという場合もあります。例えば、帰国生高校入試では現地校の9年生を修了していることを受験資格とし、高校2年生に編入するためには10年生修了を受験資格としている学校もあります。帰国生大学入試では現地の高校を卒業していないと、ほとんどの国公立大学と一部の私立大学の受験資格がありません。したがって、保護者の海外勤務が3月に終了するような場合、現地校の学年の修了や卒業までの数か月間は通学を継続した方が良いということになります。
しかし、いずれのケースにおいても、保護者の海外勤務終了と同時にビザが無効となりますので、現地校への通学を継続する場合には、在留資格の取得が必要になります。まず生徒には、現地校が認めれば学生ビザが発行されるようですので、保護者の帰国後も在留できるということになります。したがって、知人宅などにホームステイすることによって、現地校への通学を継続できます。ホームステイ先がない場合には、寮のある学校に編入学するという方法もあります。ただし、学費や寮費が高額となったり、他州の学校になったりする場合もあります。また、これらは子どものみを海外に残すということになりますので、何かとご心配になるでしょう。この他には、父親が海外勤務していた場合なら、母親が子どもと生活し、現地校への通学を継続する方法もあります。この場合の母親の在留資格の取得方法として、最寄りのコミュニティーカレッジのESLや語学学校に入学し、学生ビザを発行してもらうことができるようです。ただし、学生ビザが発行されるかどうかは、必ず各校にお問い合わせください。
また、日本の多くの高校では、保護者の海外勤務終了とともに帰国せず、子どものみが海外に在留した場合はもちろん、母親とともに在留した場合でも、帰国生入試の受験資格を認めません。一部の大学においても同様に、保護者の海外勤務終了とともに帰国することを受験資格としています。受験資格は各校によって異なりますので、必ず志望校の募集要項をご確認いただくか、各校にお問い合わせください。
最後に、昨年8月に本コラムにてご紹介した、続々と日本国内に設立されている、ほとんどの授業を英語で行う全寮制のインターナショナルスクールも、海外の学校と類似した学校生活を送ることができますので、選択肢の一つとなります。
(写真提供:名古屋国際中学校・高等学校、国際高等学校)
【執筆者】にわ・ふでひと 河合塾在職後に渡米し、北米の補習校教員・学習塾講師を歴任。「米日教育交流協議会(UJEEC)」を設立し、「サマー・キャンプ in ぎふ」の企画・運営、河合塾海外帰国生コース北米事務所、名古屋国際中学校・高等学校、国際高等学校、名古屋商科大学北米担当、サンディエゴ補習授業校指導教諭を務める。。
◆米日教育交流協議会(UJEEC)
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