丸山敏秋「風のゆくえ」第3回
風は太陽からも吹いてくる。
太陽から吹き出される毎秒100万トンもの高温の電離した粒子(プラズマ)の風は、地球の磁場に影響を与え、オーロラを発生させたりする。大規模なフレア(太陽面爆発)が起こると、人工衛星はたちまち異常をきたし、広く地上に被害が及ぶ。
太陽は2008年1月から、第二十四活動周期(サイクル24)という非常に活発な時期に入った。不思議なことにその年の8月からは、黒点がまったくない時期が1年以上もつづいた。ところが09年10月あたりから大きな黒点群が現れ始め、活動が急激に激しくなった。今年の2月15日には途方もなく大きなフレアが発生している。
太陽の活動は、これからもっと活性化する。マスコミではあまり報道されていないが、13年の半ば頃がピークだという。地球にどんな影響を与えるのだろう。
すでに観測史上例のないような異変が、各地で発生している。北アメリカ最大の火山地帯に位置するイエローストーン国立公園では、ここ数年間で半径数キロにわたる地面が大きく隆起しているという。こんなスーパー火山が大噴火を起こしたら、影響は全世界的に及ぶ(ちなみに前回の大噴火は64万年前だとか)。東日本大震災も、太陽の活動と連動したものなのだろうか。地球が盛んな活動期に入っているのは間違いない。
もう何年も前から、12年12月の冬至(21日頃)に、世界は終わるのではないかとの噂が広がっている。根拠とされるのが、マヤの暦がその日で終わっていることだ(11年10月28日が終わりだとする説もある)。16世紀に忽然と姿を消したマヤ文明が、きわめて高度な暦の文化を有していたのは事実である。
マヤ暦をもとに「暦の革命」の運動を興したメキシコ系アメリカ人のホゼ・アグエイアス博士が去る3月に亡くなった(71歳)。筆者は奇縁を得て、彼の活動を支援したことがある。世界には昔からいくつも暦があるのに、西暦という世界共通化したグレゴリオ暦だけを使うのはおかしい、と思ったからだ。
しかし博士は、マヤの暦が終わる日に世界が滅亡する、などと言ってはいない。むしろ、そこから新しい世界文明が始まると見ていた。世の終わりでなく始まりと見た方が元気になれる。
マヤ暦はともかく、太陽からの風が勢いを増してくるのは確かだろう。いつ起きるかわからない自然災害への備えは、怠らないようにしたい。
併せて、太陽があっての地球だという事実に思いを馳せ、太陽に感謝したい。太陽を絵に描くとき、赤か朱の色に塗るのは日本人だけだ。朝陽と夕陽に心を込めて手を合わせてきたからだろう。そんな床しき風習にあやかりたいものである。
(次回は7月9日号掲載)
〈プロフィル〉 丸山敏秋(まるやま・としあき) 1953年、東京都に生まれる。筑波大学大学院哲学思想研究科修了(文学博士)。社団法人倫理研究所理事長。著書に『「いのち」とつながる喜び』(講談社)、『今日もきっといいことがある』(新世書房)など多数。