〈コラム〉米日教育交流協議会・代表 丹羽筆人「在米親子にアドバイス」日米の教育事情

0

自分が何に向いているのかを考えたい

どんな学問分野に興味があるのかを考えて

今年は東日本大震災の影響で5月に入学式が行われる大学も少なくありませんでした。その入学生たちが戦った入試はどんな様子だったかを振り返ってみましょう。
2011年度大学入試は、少子化のため18歳人口は減少しているものの、大学入試志願率が上昇しているのに加え、大学入試センター試験の平均点のアップ、引き続く不況という要因によって、国公立大志願者数が約1万5000人の大幅増加をしました。中でも旧七帝大のような難関大の志願者数の増加が目立ちました。受験生が強気の出願をしたようです。一方、私立大の志願者数は横ばいであり、難関大や地区の拠点大では志願者数の減少傾向が見られました。国公立大志向の高まりによって、これらの大学の出願が絞り込まれたと推測されます。
次に学部系統別の志願状況に目を向けると、国公立大、私立大ともに「文低理高」の傾向が鮮明となっています。経済・経営・商、法・政治などの社会科学系の志願者数の減少が目立つ一方で、理、工、農、医・歯・薬・保健など理系は志願者数の増加が目立ちます。また、医・歯・薬・保健学系に加え、教員養成系や生活科学系など資格系統の志願者数の増加が顕著です。
この背景には長引く不況による大学生の就職難があります。受験生にとっても就職には強い関心があり、河合塾の塾生アンケートでも、大学に進学する理由として「希望する業種や職種に就職すること」がトップに上がっています。
ここで、帰国生入試に目を向けると、このような傾向とは異なった様相が見られます。それは、「有名私立大人気」「文高理低」です。帰国生入試(4月入学)の皮切りとなる早稲田大は約8割が受験するほどですし、慶應義塾大、上智大、国際基督教大、青山学院大などに受験生の人気が集中しています。また、理科系の受験生の比率も少なく、むしろ「理系離れ」が進んでいます。これはどうしてなのでしょうか。
まず、帰国生は日本の大学に関する知識が少ないことが挙げられます。そのため、自分の知っている限られた大学に志願者が集中するのです。
また、帰国生入試において文科系学部の一般的な入試科目は、小論文と英語と面接のみですが、理科系学部では、数学や理科も課されます。これは日本の高校での履修内容に相当するので受験生にとって負担となっているのです。
しかし、本当は理科系に向いているのに、文科系学部を選ぶことはよくありません。学部の選択は卒業後の進路=就職にも大きな影響があります。自分が何に向いているのか、どんな学問分野に興味があるのかを考えて進路選択をすることが大切です。
(次回は6月25日号掲載)(「WEEKLY Biz」2011年5月28日号掲載)
◇ ◇ ◇
米日教育交流協議会のウェブサイトにて、当コラムのバックナンバーもお読みいただけます。
UJEEC Website: www.ujeec.org

過去の一覧

Share.