アーティスト・林世宝「チリも積もれば芸術に」第3回
2005年の「智恵の門」、06年の「クリスマス・ラブツリー」に続くハート集結シリーズとして「集夢計画」を発表したのが08年の春でした。「また皆が参加できるような企画を考えて」という声に応え、これまで私の中に留めていた夢を実現しようと思い立ったのです。船を漕ぎ出してはみたものの、夢を集めて映画を作るという企画は、これまでになく大掛かりなだけでなく、映画については私を含めて皆が素人。しばらくすると「夢が大きすぎる」「無理だ」「不可能だ」という声が方々から聞かれるようになりました。
負のオーラが立ち込めてきたのを感じ、昨年の春、皆のもとへ来日しました。知り合いになった兵藤ゆきさんに相談すると、彼女も集夢計画に参加してくれるとのこと。それを聞いた地元名古屋のボランティアたちは大喜びで、再び団結しようと意気込みを新たにしたのでした。その時の兵藤さんは、果てしなく広がる暗い海にさまよっていた私たちを照らす灯台のようで、その光に向かって船を進めようと思いました。
同じころ、もう一つ明るい話題がありました。母国台湾の故郷の村が私の企画に賛同してくれて、村を挙げてバックアップしようと申し出てくれたのです。
「集夢計画」の難関の一つは資金集めにあります。ハート集結シリーズの制作は全てゼロからスタートし、これまでも数100万から1000万円位を募金などで集めた経験はありますが、映画制作となると億単位の資金が必要になります。まず、私がデザインしたTシャツや小物を販売することから始めてみましたが、目標額に達するまでどれ程掛かるか計り知れません。そんなときに出た応援の話だったので、これをきっかけに前進するだろうと台湾行きを計画しました。
(つづく)
〈プロフィル〉リン・セイホウ 1962年台湾生まれ。日本に留学中に日展、日仏現代美術展に出展し数々の賞を受賞。その後、渡米し、96年NY大学大学院修士課程を修了。NY現代美術展メディア賞、アジア傑出アーティスト賞などを受賞。世界中から素材を集める、ハート集結シリーズの代表作には「智恵の門(愛知万博)」、「ラブツリー(20万のおしゃぶり)」がある。NY在住。【フェイスブック】