集夢計画53「希望」

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アーティスト・林世宝「チリも積もれば芸術に」第58回

日本でボールを集めてくれている愛知県の田口貴一君(左)と瀬戸和江さん

日本でボールを集めてくれている愛知県の田口貴一君(左)と瀬戸和江さん

新年明けましておめでとうございます。

「一日之計在於晨、一年之計在於春(一日の計は朝にあり、一年の計は春にあり)」。皆様が幸運に導かれ、ますます発展されますことをお祈り申し上げます。

行動アートを続けて30年、「発表した企画はどれも完成してあなたは幸運」と言われたりしますが、どの企画もゼロからのスタートなので、その道程は山あり谷あり。例えば、2015年に完成した「F1いいねカー」。目標の携帯電話2万5000個の収集に困っている時、ある電話会社から「寄付してくれたら集めてあげます」という話がありました。素材を買うのでは趣旨から脱線。甘い話には乗らずコツコツ集め、完成までに4年の歳月を要しました。これまで続けてこられたのは、平和や愛をテーマにした制作理念に賛同してくれる人が絶えずに次々現れ、その人たちからパワーを受け取り、作品に注ぎ込んでこられたおかげです。愛はお金では買えないし、平和は一人の力ではどうにもならず、皆の力を集めて輪を広げていくしかありません。

昨年2月からスタートした「希望のツリー」は、これまでの中でもチャレンジ性の強いものとなっています。世界の平和と希望の発信をテーマに、選手たちのパワーが詰まったボールでツリーを作る企画で、日本の友人は、自分で作った資料を持って数十カ所の野球関連施設を回ってくれました。最初の2カ月は数十個しか集まらず嘆いていた翌月、その行動がメディアに取り上げられ、どんどん連絡が入るようになり1万個を突破。日本の他にも20カ国以上の野球チームから送られてきた合計は現在約1万4000個。完成後、2019年のWBSCベースボールワールドカップの開催地、ニューヨーク、ペルー、日本、台湾を巡回し、最終目的地は東京五輪の野球会場。「念ずれば花開く」を信じて今年も頑張ります。

(次回は3月第2週号掲載)

 

林世宝〈プロフィル〉リン・セイホウ 1962年台湾生まれ。日本に留学中に日展、日仏現代美術展に出展し数々の賞を受賞。その後、渡米し、96年NY大学大学院修士課程を修了。NY現代美術展メディア賞、アジア傑出アーティスト賞などを受賞。世界中から素材を集める、ハート集結シリーズの代表作には「智恵の門(愛知万博)」、「ラブツリー(20万のおしゃぶり)」がある。NY在住。【フェイスブック

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