〈コラム〉集夢計画62「盡人事、聴天命:人事を尽くして天命を待つ」

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アーティスト・林世宝「チリも積もれば芸術に」第67回

「希望のツリー」制作現場。ニューヨークのボランティアと一緒にボールをつないでいるところ。1本に20~30個、約1000本のボール付きワイヤーをツリーに取り付けました

「希望のツリー」について、皆さまに感謝とおわびの意を込めて報告させていただきます。

2020年東京五輪に野球復活の発表を受け、長年野球の仕事に携わる友人と2017年から始めた企画。「ネバーギブアップのスポーツ精神で、平和・愛・希望を未来につなげよう」のメッセージをツリー点灯で発信、五輪会場で展示することが目標でした。

アートの魅力にひかれ、今回もたくさんの人が協力してくれました。なかでも、日本のボランティアは、使い古されたボールを全国から集めてくれ、ニューヨークまで発送。40カ国以上の国々から私のもとに集まったボールの内7割は日本からのもの。その内2万5000個を使ってツリーは完成し、今年2月に発表しました。

小さいボールの中には使った人の心とストーリーがぎっしり。スポーツ選手の夢である五輪に、自分たちは行けなくてもこの気持ちを会場に連れていってと託され、東京五輪委員会の会長、副会長に直接会い、夢を伝えました。素晴らしい企画とほめられても、IOC(国際オリンピック委員会)の許可なしでは無理と言われ、申請してみたものの、梨(なし)のつぶて。同時期に展示だけでもできないかと考え、知り合いを通じてイベント会社から出された見積もりは1000万円超えで、これは不可能と判断せざるを得ませんでした。「希望のツリー」は日本での展示が叶(かな)わないこと、応援してくださった皆さまにおわびいたします。

現在、作品を台湾に送ってほしいという依頼がきています。故郷の台湾は快く受け入れてくれるというので、その方向で進めていこうと考えています。「盡人事、聴天命」一生懸命努力したので、あとは天命に任せよう。30年取り組んでいる行動アートはいつも円満で成功しています。「希望のツリー」を皆さまにお披露目できる日が近々来ることを願ってやみません。

(次回は9月第3週号掲載)

〈プロフィル〉リン・セイホウ 1962年台湾生まれ。日本に留学中に日展、日仏現代美術展に出展し数々の賞を受賞。その後、渡米し、96年NY大学大学院修士課程を修了。NY現代美術展メディア賞、アジア傑出アーティスト賞などを受賞。世界中から素材を集める、ハート集結シリーズの代表作には「智恵の門(愛知万博)」、「ラブツリー(20万のおしゃぶり)」がある。NY在住。【フェイスブック
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