ハチミツ二郎 インタビュー 世界は行ってみないと分からない

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「ガチ!」BOUT 268
お笑い芸人 ハチミツ二郎に聞く

東京で聞いたNYへの思い

「M─1グランプリ」、「THE MANZAI」ファイナリスト。実力派お笑いコンビの「東京ダイナマイト」のツッコミ担当、ハチミツ二郎。ニューヨークにはプライベートで20回以上訪れたという。「西口プロレス」の所属レスラーとしても活躍している多才な二郎さんに、ニューヨークへの思い、今後の夢を東京で語ってもらった。 (聞き手・高橋克明)

ニューヨークが非常にお好きだと聞きました。
二郎 そうですね、もう20回以上は行ってると思います。

プライベートで、ですか。
二郎 全部、プライベートです。仕事ではまだないですね。20代のころから年2回くらいのペースでずーっと行ってますね。

そこまで行かれている方はなかなかいませんよね。
二郎 それこそエレベーターが手動の古いホテルから、(ニューヨーク)マリオット(マーキス)までホテルもいろいろ泊まって。今でこそ安全ですけど、まだガイドブックに「ハーレムは行くな」って書いてあったころにも、一人でアポロシアターに行ったりとか。「シルビアズ(レストラン)」っていうソウルフードのうまい店に通ったりとか。

20年前のハーレムは今とは違いますね。
二郎 当時はタクシーも走ってくれなかったりだったんですけど、(アポロシアターまで)地下鉄で行けばすぐだし。今ではどんどんきれいになっていってますけど。

そこまでハマった理由はなんでしょう。
二郎 人生最初の海外旅行がニューヨークだったのが大きかったかもしれないですね。もともと田舎モンだったので、岡山から東京に出てきた時に新宿のビル群を見上げて、わーって思ったんですよ。その時、ここで芸人になりたいって思って、ここで勝ち上がらなきゃって思ったんですよ。で、実際に芸人になれて、M─1(グランプリ)にも出られて、偉そうな意味じゃなくて、東京ではもう刺激を感じなくなったんです。23区どこを歩いても、一応は顔を指してもらえるような立場になったので。

その刺激をニューヨークで感じられた、と。
二郎 いまだにタイムズスクエアを歩くと、何か、下からドンドンドンドン、ドラム音が鳴ってるような感覚があって…。分かります? 地面からのパワーを感じるというか…。

分かります。
二郎 それは東京では感じられないですよね。例えば、公園一つとっても、セントラルパークの美しさは、セントラルパークにしかなくて。新宿中央公園は、今やホームレスのための公園になってるし、もちろんしょうがない部分はあると思うんですけれど。

セントラルパークにはホームレスは逆に絶対いないですね。
二郎 日本人からすると、それってちょっと不思議で。みんなジョギングしたり、お年寄りが散歩したり、緑もきれいで、ゴミも落ちてなくて、公園が公園らしい。日本なんて若いやつがコンビニで買ったパンの袋とかジュースとかを平気で小さい公園でも捨てて帰るような現状なんです。うちの近所の公園も、子供が遊ぶようなところなんですけど、朝通ると吸い殻とかカップラーメンとか置いてあるわけですよ。小さな公園でもリスがいるニューヨークとは、全然違いますよね。

セントラルパークでは、春夏秋冬で全く違う表情になりますし。
二郎 全部、見ました。春夏秋冬、全部、行ったと思います。オレ、冬のニューヨーク、好きなんですよ。行ったことない日本の人はみんな「寒いんでしょう」って決めゼリフみたいに言うんですけれど、12月でも半袖で歩いてる人、結構いるじゃないですか。

はい(笑)。ニューヨーカー、季節感ない人多いです。
二郎 それって、やっぱり行ってみなきゃ分からないですよね。行ってみて初めて分かることも多くて、それが面白い。シガーバーでも禁煙なのに、通勤中の女性が歩きタバコしてたり。東京も禁煙、禁煙って進めていくのなら、道で吸ってる人のタバコをすぐ掃除するシステムを作らなきゃダメだなって、ニューヨークに来て、教えてもらいました。

必ず行かれるところはありますか。
二郎 名前は忘れたんですけど、リトルイタリーにあるピザ屋があって、もうそこが大好きで。まだ幼稚園の娘も2回ほどニューヨークに連れていってるんですけれど、かぶりつくくらい。個室もなくテーブルが何個かしかない店なんですけど、そこにはいつも行きますね。日本でうまいピザって結局、マルゲリータになっちゃうんですよ。チーズと葉っぱだけ、みたいな。でも、そこだとこんなにうまいの! ってくらいのペペロニを食べられる。

へー。行きたいですね。店名は分からないですか。
二郎 なんだっけ、、リトルイタリーにあって、(アル・)パチーノや、(ロバート・)デ・ニーロのサインが飾ってあるところです。

リトルイタリーでパチーノとデ・ニーロのサインがあるピザ屋…100軒くらいありそうです。(笑)
二郎 でも、リトルイタリーで人気あるピザ屋に絞っていけば絶対当たる。日本にいても、あそこ行きたいなぁってしょっちゅう思いますね。

今のニューヨークのピザはイタリアよりおいしいって言われてるくらいなので。レストラン以外ではありますか。
二郎 ブロードウェイのミュージカルは20代終盤から30代前半まで全部一通り見たんですよ、全会場で。でも、ユニオンスクエア(横にある劇場)のオフブロードウェイ「ビーシャ・ビーシャ」にいちばん刺激を受けましたね。

僕も一番好きです。アルゼンチンのパフォーマンス集団ですね。
二郎 3年前かな、動画撮影OKって言われて、度肝抜かれたんですよ。SNSに載っけてもいいよって。

はい、載せたことあります。(笑)
二郎 今、お笑い(ライブ)って、基本的に撮影ダメなんです。でも、われわれの単独ライブで、最後のコントだけ写真OKにして。「全員SNSにどうぞ」って。それはニューヨークで「ビーシャ・ビーシャ」を見てそうしたんですよ。これだけ「だめですよ、だめですよ」って言われている時に、「いいですよ」って言われたら、もう盗撮しなくなる。好きなシーンを切り撮って(SNSで)よく書くしかないだろうって。

なるほど。それに行って体感しないと意味ないステージですし。
二郎 そうなんですよ。映像を見たところで、生で行った方が絶対面白いんで。むしろ、そこに行ってみたい!ってなるはずなんです。そういったところも刺激を受けましたね。あと(アポロシアターの)アマチュアナイトに行った時も、(観客は)最初はブーイングしてた女の子(のパフォーマー)にも、いざ、歌ってみてうまかったら、さっきまで「帰れ!」って言ってた連中が、みんなでスタンディングオベーションして。

ある意味、ニューヨーカーは分かりやすいですね。
二郎 そう。いいものはいい。悪いものは悪い。日本だったら、悪いと思っても言わない。いいと思っても周りの人が拍手するまではしない。「(エンターテインメントって)本当に思うままに見ればいいんだ」みたいなところも勉強になりましたね。

いろいろと刺激を受けられていますね。
二郎 刺激だらけです。だからニューヨーク本当はもうもっと行きたいんですよ。最低でも年2回ペースでは行き続けたい。

そのニューヨークでご自身のライブをされたい気持ちはありますか。
二郎 それは、もう。絶対に。実はある約束があって。イーストビレッジの「でしべる」って日本酒バーに行った際、日本人のお客さんに「二郎さんですよね」って声を掛けられて。「なんで僕のこと知ってるんですか」って聞いたら、日本のテレビ番組はもう次の週には見られるっていう話で。

ニューヨークには24時間の日本語プレミアムチャンネルもありますし。
二郎 じゃあ僕がニューヨークでライブをやったら、ニューヨークに住んでる日本の皆さん見に来てくれますかって聞いたら、「僕らが集めてでも必ずみんなで行きますから」って言ってくださって。

ニューヨークで見知らぬ日本人とそう約束した、と。
二郎 でも、そこから10年以上経ってしまってるんですけれど。でも、自分の中でずっとあるんですよ。いつかニューヨークでライブをやらなきゃいけないって。現地に住んでる日本の人に日本語の漫才を生で見せに行きたいっていう気持ちが。

10年以上持ち続けた夢であれば、本物ですね。
二郎 もうその方たちも日本に帰ってるかもしれない。すでにニューヨークにいない可能性も高いと思うんですよ。でも、それは、もう自分との約束なんで。

相方の松田(大輔)さんも賛成されるでしょうし。
二郎 うちの相方って、何やるにしても、基本「分かった」なんですけど。「事務所やめよう」「分かった」、「事務所変えよう」「分かった」(笑)。まずNOがないんです。NOもないし「それやりたい」ってのもないんです。「今度、オレ、大仁田厚と電流爆破マッチやるから」「分かった」って。(笑)

二郎さんを信頼されているんですね。
二郎 で、(試合は)見に来ない。(笑)

わはははは。
二郎 相方があの大仁田厚と電流バトル戦うのに見に来ない。しかも仕事でもない。家にいるっていう(笑)。そういう人なんですけど、今日、この取材を受けるってことで「オレ、ニューヨークでライブやれたらと思って」ってさっき会った時に言ったら、「ニューヨーク行きてえ」って。

それだけは。
二郎 まあ、相方、ニューヨーク自体1回も行ったことないんですけど(笑)。それにやるにしても、会場探しやら、集客やら、事務所にどう説明するか、なんてところは一切入ってこないですから(笑)。ただ、あの人は会場に来て、しゃべるだけなんです。でもそんな男が、ニューヨークは行きたいって、即答で言ったんです

絶対、実現しなきゃいけないですね。
二郎 やっぱりスポーツでも、音楽でも、生の方がいいように、お笑いも絶対生の方がいいんで。日本にいた時に1回もお笑いライブ見に行ったことない人でも、見に来てくれればもう必ず「あー、良かった」「面白かった」と思わせる自信はあります。なので、これを読んでくださった現地の方々には、その際はぜひ、会場に足を運んでいただきたいですよね。

それではあらためて、ニューヨークに住んでいる日本人にメッセージをいただけますでしょうか。
二郎 いやぁ、もう僕が住みたいくらいなんで。日本人から見ると、アメリカの中でも一番遠いじゃないですか。(移動)時間的にも、距離的にも。でも、日本(国内)の中でも(例えば、地方から見る東京とかは)「遠い」と思ってる人はいて。でも、ニューヨークと東京が近いと感じてる人もいて。なので、新宿の劇場に行くような感覚でニューヨークまで漫才やりに行きますから。マイク1本あれあればできますから。その際にはぜひ、お越しください!

 

★ インタビューの舞台裏 → ameblo.jp/matenrounikki/entry-12410639506.html

 

ハチミツ二郎(はちみつ・じろう)職業:お笑い芸人
1974年生まれ。岡山県出身。お笑いコンビ「東京ダイナマイト」のツッコミ担当。90年代中ごろに初代相方とコンビで結成、2001年に2代目と再結成した。08年6月、当時の所属事務所、オフィス北野を退社。09年8月によしもとクリエイティブ・エージェンシーへ所属。「M─1グランプリ」04年に第8位、09年では第6位に。かつてお笑いプロレス団体「西口プロレス」の所属レスラーとしても活動しており、メキシコでプロレスラー(ルチャリブレ)のライセンスも習得している。鍋料理店「Dining二郎」を経営するなど、実業家としての顔も持つ。

高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「NEW YORK ビズ」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、400人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。

(2018年10月13日号掲載)

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