〈コラム〉税金未納も改善できるナッジ理論

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「永野・森田公認会計士事務所 日下武」ビジネスのツボ 第80回

2018年のノーベル生理学・医学賞が京都大学の本庶佑特別教授に授与されることが発表されました。今年の日本は台風や地震の被害が多く心が痛むニュースがよく耳に入ってきますが、久しぶりに嬉しいニュースを聞きました。

ノーベル賞というと2017年にノーベル経済学賞を受賞したシカゴ大学のリチャード・セイラー教授が発表した「ナッジ理論」というものがあります。経済学は、もともと人間が合理的な存在という前提に基づき、社会や経済の動向を説明する科学ですが、このナッジ理論は、人間は無意識のうちに気分や環境に影響され、非合理な判断や行動をしてしまうということも認めて理論を構築しています。いってみれば、心理学と経済学の融合のような学問で行動経済学の分野に入ります。このナッジ理論を使った成功例として有名なものは、少しきれいな話ではないですが、男子トイレの話です。

1999年にアムステルダムのスキポール空港では経費削減のために策を練っていました。その時に注目したのが男子トイレの床の清掃費の削減についてでした。利用者の使い方が悪く小便器のまわりの清掃費が嵩んでいたからです。最初は「汚さないでください」などの張り紙をしていましたが、あまり効果はなかったようです。そこでナッジ理論の登場となりました。ナッジとは英語で「そっと後押しをする」や「肘で軽く突く」という意味合いがあり、科学的分析に基づいて人間の行動を誘導するという理論です。このケースでは小便器の内側に1匹のハエの絵が描かれました。その結果、驚くことに清掃費は8割の減少しました。

「人はターゲットがあると、そこに狙いを定める」という分析から、小便器にハエを描くことでターゲットを作り、利用者に小便器をきれいに利用させることに成功しました。カリフォルニアでは省エネ意識を高めるために「隣の人はこんな省エネの努力をしています」というような手紙を配ったところ、住民の省エネ意識が高まったという調査結果もでています。

「周りがきちんとしているのなら、自分もしよう」という心理が働くようです。ある地域では「住民のほとんどの人が期限内に納税を済ませています」という手紙を配ったところ、納税率が68%から83%に上昇したという例もあります。

ナッジ理論を使うと命令されることなく、皆が自分の意思で決めたように気持ちよく行動することができるかもしれませんね。良いことにどんどん活用されることを願います。(次回は11月第2週号掲載)

business-kusaka-takeshi〈プロフィル〉 日下 武(くさか たけし) 永野・森田公認会計士事務所NJ拠点マネージャー。大手日系食品商社での営業経験を生かし、顧客の立場になって、全体的なビジネス、会計、税務相談を受けている。メーカーからレストラン、リテーラーマで、幅広く顧客を持つ。
ウェブwww.nagano-morita.com/ Tel:201-363-0050 E-mail:[email protected] 2125 Center Ave., Suite 104, Fort Lee NJ
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