【独占インタビュー】YOSHIKI

0

Photo credit: YOSHIKI

BOUT. 315

作詞家、作曲家アーティスト YOSHIKIに聞く

自分で壁を作って、その壁を越えていく

三大殿堂でコンサート

今年10月に、日本人として初めて英米の歴史的な3会場でソロコンサートを行うYOSHIKI。ロックバンドのリーダー、ドラマー、クラシックピアニスト、プロデューサーと、さまざまな顔をもつYOSHIKIが、クラシカルワールドツアー「YOSHIKI CLASSICAL 10TH ANNIVERSARY – World Tour with Orchestra 2023 ‘REQUIEM(レクイエム)’」で、東京ガーデンシアター(東京)、ロイヤル・アルバート・ホール(ロンドン)、ドルビーシアター(ロサンゼルス)、カーネギーホール(ニューヨーク)で演奏する。常に新しい挑戦を続ける彼を奮い立たせるものは何なのか、多忙を極めるスケジュールで世界中を飛び回るYOSHIKIに、話を伺った。 (聞き手・高橋克明)

7回目の単独インタビューになります!

YOSHIKI もう、7回 !? いつもありがとうございます。

YOSHIKIさんの北米での活動を取材するのは、もう誰にも譲りたくないくらいです(笑)、ツアーの準備、レコーディングなどかなりハードな毎日かと思います。体調はいかがでしょう。

YOSHIKI 普通に悪いです(笑)。いや、悪いというか…もう普通ですね。普通に腱鞘(けんしょう)炎もあるし、首もまた次の手術をしなきゃいけない状況で…でもギリギリ頑張ってます。

今回のツアー、150年以上の伝統を築いてきたロンドンのロイヤル・アルバート・ホール、ロサンゼルスのアカデミー賞授賞式の会場、ドルビー・シアター、そしてニューヨーク、カーネギーホール。この三つの殿堂でのコンサートは、もちろん日本人としてはYOSHIKIさんが初めてになります。さすがのYOSHIKIさんにとっても特別な想いではないでしょうか。

YOSHIKI おっしゃる通りですね。やはり僕はいつも…その、なんていうか「beyond the comfort zone」って言えばいいのかな。すでに成し遂げてしまったモノの中で、心地よいコンサートだけをすることができなくて。やっぱり、常に今まで成し遂げてないことをやっていく、挑戦する、みたいな気持ちを持っていたい。壁を自分で作って、その壁を越えていく。そういう心構えは、楽ではないですけど、でも、そこに向かっていきたいんだと思うんですね。

はい。ずっとそう見えます。

YOSHIKI まぁ…アメリカに来て30年近く経つんですけど、まだまだ成し遂げていかなきゃいけないことがたくさんある中で、また、ひとつ挑戦できる。その環境には感謝しなきゃいけないなと。

…感謝ですか。

YOSHIKI うん。30年前に、日本人としてこの国で音楽で通用するか、試してみたかった。通用しないとは思えなかった。もし、通用しないなら、僕は日本に戻ろうと思っていて。でも、本当にゆっくり、ゆっくりではあるんですけど、一つ、一つ、何か達成できている実感はある。それ自体に、まず感謝ですね。挑戦できたから、そう感じられるわけで。…でも、まぁ、いつも自分は毎回、一つ二つ上のものを目標に合わせてしまうので、すごくツラかったりもするんですけど。(笑)

今回のツアーのタイトル「レクイエム」の意味は鎮魂歌です。勝手な想像ですが、昨年5月に亡くなったお母さまへの想いもあって、このタイトルにされたのかな、と。

YOSHIKI そうですね…人生で、hideの死や近しい人の死を経験するたび、すごく落ち込んで、前に進めない自分がいたんですね。今回はそれ以上で、その時の気持ちは、5分5分。ヘタしたら8・2くらいで前に進めないと思って。もう、ここまでかな、と。

当然ですが、とても大きな出来事だった。

YOSHIKI 僕はLAにずっと住んでいるので、母と過ごす時間も短かったんですよ。でも、いつかは〝 世界 〟を獲って〝 世界 〟を母にプレゼントしたいと思っていた。それを実現できないままに、母はこの世を去ってしまった。そこで僕としては、二つのチョイスがあったんですよ。ここで諦めるか、母は去ったしまったけど、今度はこれを、、、〝 世界 〟をファンに届けるのか。

はい。

YOSHIKI 母が生きている間は、自分の思う〝 世界 〟は獲れなかったけど、今度はファンと一緒に戦って獲って、母に捧げるという気持ちを込めて「レクイエム」。世界における挑戦とか、母への思いとか、ファンへの思いとか、いろいろな想いで、付けました。

そして7月には、ファン待望となるX JAPAN8年ぶりのシングルもリリースされます。

YOSHIKI 次のシングル「Angel」はとっても美しい曲なんですね。母が亡くなって、この1年の間、自分の曲も聞いてたんですけど、未発表とかも含めて、この曲は世に出したい、と思って。X JAPANって、いろいろタイミングを考えてると、なかなか前に進めなかったり、進めたり。でも、やっぱりこの曲は、世に出るべきだろうと。世に出したい、と。

楽しみです。

YOSHIKI こんなに癒やされる、救われる曲はないって思っているので。結局、この楽曲によって自分も救われて。自分も救われるってことは、きっとみんなのことも癒やすことができるだろう、心の支えになるだろう、と。みんなを音楽で救えることもできるんじゃないか。楽曲ってすごいパワーを持ってるので。

はい。

YOSHIKI コロナにしても、世界情勢にしても、戦争にしても、世界が色々なことに直面している中で、僕は曲を出したい、出し続けていくべきなんだなって思ってます。

はい。

YOSHIKI 今、スタジオでレコーディングや撮影がある中、本当に1分でも時間があったらピアノの練習をしています。ピアノ、25〜26台持ってるんですけど、ビデオ編集スタジオに入れたり、ちょっと廊下にも置いといて1分あったら、もう(練習を)。さすがに飛行機の中に入れて移動するわけにもいかないんですが、泊まっているホテルのボールルームにピアノが置いてあったら、明け方、ちょっと練習させてくれないかって、使わせてもらったり。

コンサートの中では、ベートーベン、ザ・ラスト・ロックスターズのクラシックバージョンもあると聞きました。それに向けても練習が必要、と。

YOSHIKI 今回クラシックコンサートということもあって、僕の好きなクラシックの名曲を何曲か弾きたい、と思っているんです。あとは、僕なりのアレンジをやってるバージョンも…。結構なスケジュールでピアノは練習してます。

どうしてそこまでYOSHIKIさんは戦うのでしょう。今の名声、今の地位を守るベテランも多いと思います。昨年はザ・ラスト・ロックスターズで世界を回られた。お母さまも亡くなられ、先に進めない中、また歩くと決めた。YOSHIKIさんの原動力はなんでしょうか。

YOSHIKI だって、自分なんて、そんな(笑)大御所では全然ないですし、まだまだだなって。ファンの人たちがすごく支えてくれているので、なんとか頑張ってるけど、いつもギリギリのところにいて、本当は、もっともっと自分ができたら、と思ってます。この先に世界に出てくる日本の人のために、壁を壊したいと思っているし…そうですね、やっぱり目に見えない壁ってあると思うんですよね。僕は、生きてる限り、壊していきたい。次の世代につなげていきたい。…もちろん、僕自身も生きているうちの日の目を見たい。

最初におっしゃった「beyond the comfort zone」。今の日本人にいちばん必要な言葉かなと思います。

YOSHIKI 安心のZONEの中だけで、安心して暮らしていくのは悪いことではないと思うんです。もちろん、いろいろな人のいろいろな考えがあっていいと思うんですけど、でも、僕は常にその外に出ていきたい。ZONEの中だけで、活動していると人って成長しないと思うんです。僕にとっては、常にそのZONEの外に出ていくのが、人生だっただけで。

最後にニューヨークの日本人にメッセージをお願いできますか。

YOSHIKI ニューヨークって、必ず、僕の人生の節目節目で何かあって。マディソン・スクエア・ガーデン(2014年)もそうですし、前回のカーネギーホールもそうですし、前回のラスト・ロックスターズもそうですし、今回も、世界ツアーの最終地点がニューヨークですし。なにか、すごく僕と相性のいい街って気がします。

はい、間違いなく。

YOSHIKI できることならニューヨークに住みたいなっていつも思っていて、やっぱり雰囲気も好きですし、そうですね…ニューヨークと僕って何かあるんだろうなぁ…うん、特別な街ですね。ぜひニューヨークのファンの皆さんの1人にでも、僕の生き方が刺激になればと思います。
多分、こちらに来て頑張っている皆さんも、決してすべてが順調じゃなくて、日本人として、こちらに住んで大変なこともたくさんあると思うんですよ。そのうえで、頑張ってほしい、頑張ってください、と。そしてぜひ、コンサートに足を運んでください。皆さんにインスピレーションを与えるようなコンサートになると思うので。

ニューヨークの日本人の中では、伝説の「マディソン・スクエア・ガーデン」がいまだに語り草になってますので。

YOSHIKI 次回のツアーで、また新たな伝説を作りたいと思っています。(にっこり)

◇ ◇ ◇

ロサンゼルスのグラミーミュージアムでの記者会見で、自身のクラシカルワールドツアーから、『Requiem(レクイエム)』を初披露したYOSHIKI=5月15日、ロサンゼルス(Photo credit: YOSHIKI)

ロサンゼルスのグラミーミュージアムでの記者会見で、自身のクラシカルワールドツアーから、『Requiem(レクイエム)』を初披露したYOSHIKI=5月15日、ロサンゼルス

クラシカルワールドツアー
「YOSHIKI CLASSICAL 10th Anniversary World Tour with Orchestra 2023 ‘REQUIEM’」

〈ロサンゼルス・ドルビーシアター公演〉
・会場:ドルビーシアター
・日程:2023年10月20日(金)
・チケットリンク:www.ticketmaster.com/event/09005EABD2E95718

〈ニューヨーク・カーネギーホール公演〉
・会場:カーネギーホール
スターン・オーディトリウム/ペレルマン・ステージ
・日程:2023年10月28日(土)
・チケットリンク:www.carnegiehall.org/calendar/2023/10/28/yoshiki-classical-0800pm

記者会見で、クラシカルワールドツアーを発表したYOSHIKI=5月15日、ロサンゼルス(Photo credit: YOSHIKI)

記者会見で、クラシカルワールドツアーを発表したYOSHIKI=5月15日、ロサンゼルス


YOSHIKI
作詞家、作曲家、「X JAPAN」「THE LAST ROCKSTARS」リーダーとしてピアノ、ドラムを担当。
これまでに天皇陛下御即位十年記念式典の奉祝曲、愛知万博公式イメージソング、ハリウッド映画のテーマソング、そして世界最高峰の米ゴールデングローブ賞公式テーマソングを作曲するなどグローバルに活動。YOSHIKI率いるX JAPANは、これまでアルバム・シングル合わせ3000万枚を超える売上げを誇り、5万5000人収容の東京ドームを18回ソールドアウトにした記録を持つ伝説のバンド。2014年に米ロックの殿堂マディソン・スクエア・ガーデン公演、17年に英ロックの殿堂ウェンブリー・アリーナ公演を成功させ、米クラシックの殿堂カーネギーホールでの単独公演とあわせ、アジア人として初めて音楽の三大殿堂を制覇。
音楽活動以外にも、自身が立ち上げた着物ブランド「YOSHIKIMONO」のデザイナーや、日本人男性として初めて「VOGUE JAPAN」の表紙を飾るなど、ファッションアイコンとしての顔も持ち、21年には、仏バカラのアルクール・グラス180周年を記念したデザイナーに抜擢されるなど、活動は多岐にわたる。また、米国“501⒞⑶”非営利公益法人 Yoshiki Foundation Americaを設立し、長きに渡り慈善活動に力を入れている。そして22年、YOSHIKIは日本コカ・コーラとタッグを組み、エナジードリンク「リアルゴールドX」「リアルゴールドY」を発売した。

【公式サイト】jp.yoshiki.net/(日本語)
【インスタグラム】@yoshikiofficial/
【ツイッター】@yoshikiofficial

◇ ◇ ◇

〈インタビュアー〉
高橋克明(たかはし・よしあき)
専門学校講師の職を捨て、27歳単身あてもなくニューヨークへ。ビザとパスポートの違いも分からず、幼少期の「NYでジャーナリスト」の夢だけを胸に渡米。現在はニューヨークをベースに発刊する週刊邦字紙「ニューヨーク Biz!」発行人兼インタビュアーとして、過去ハリウッドスター、スポーツ選手、俳優、アイドル、政治家など、1000人を超える著名人にインタビュー。人気インタビューコーナー「ガチ!」(nybiz.nyc/gachi)担当。日本最大のメルマガポータルサイト「まぐまぐ!」で「NEW YORK摩天楼便り」絶賛連載中。

(2023年7月8日号掲載)

Share.