「世の中は不思議に満ちている」
分からないから、人生は面白い
ニューヨーク倫理友の会は4日、名門プライベートクラブとして100年の歴史をもつニューヨーク・アスレチッククラブで第14回年次総会を開催した。
同会理事長のリンゼイ芥川笑子氏のあいさつに始まり、在ニューヨーク総領事・大使の草賀純男氏が祝辞を述べた。リンゼイ氏がユーモアあふれる理事の紹介などを終えると、フルコースメニューが振る舞われる中、ジャズピアニストの大江千里さんが登場。日本でシンガーソングライターとして活躍した大江さん。7年前にジャズピアニストとしての道を歩むため、一人ニューヨークに移り住んだ。そんなエピソードとともに、オリジナル曲や瀧廉太郎の「花」をジャズ風にアレンジした楽曲などの演奏を披露、参加者を楽しませた。
そして、メーンイベントである一般社団法人・倫理研究所理事長の丸山敏秋氏による講演がスタート。今年のテーマは「世の中は不思議に満ちている」。
まず、世界の七不思議の中で唯一現存するピラミッドの不思議に迫るとともに、“黄金比”との関連を紹介。ピラミッドは正五角形の一辺と対角線の比という“黄金比”となっており、欧米ではその比率に美しさを感じるという傾向にあると言われている。一方、日本人は“白銀比”と呼ばれる、正方形の一辺と対角線の比が、建物や畳など、日本文化のいろいろなところに活用されているという。なぜ動きのある美は黄金比で、静かな美は白銀比なのか。それがなぜ人の心を動かすのか、それも一つの不思議だと解説した。
不思議に満ちあふれた自然界には、「なぜ」という問いには“HOW”と、“WHY”という二つの答えがある。ある科学者は「人類は科学の発展によってさまざまなことを解明したが、まだ物質世界の4%しか分かっていない」と言ったことを例に出し、「世界は不思議なことが不思議ではない、変な不思議な世界なのだ」と、ユーモアたっぷりに話した。
人間の不思議については、ニューヨークで野口英世と共に研究したフランス人生物学者のアレキシス・カレル氏が第2次世界大戦前に書き残した『人間この未知なるもの』から言葉を紹介。その一節に「人間はまだほとんど分からない存在だという、分からないが、勝手に科学が発達して、このような文明が出来上がった。このままのゆがんだ文明のままでは人類は滅びる。そうならないためには、物の世界の探求と、それ以上に人間の探求が必要」とあり、己を“知らぬまま”文明を作り出して動かそうとしている現状を「このままではゆがみ合ってしまう」と説いた。
最後に、人生の一大事である「死」に触れた。人間は、自分が死ぬことを知っていて、それを考える唯一の動物。死後の世界には未知で、それを考えない方がいいと話す一方で、死についての自覚が、深く生きることにつながる、と説いた。
参加者にとって、人間のあり方について考えさせられる機会となった。
(写真はいずれも4日、ニューヨーク・アスレチッククラブ=撮影:鈴木貴浩)
(「WEEKLY Biz」(ニューヨーク)2014年11月15日号掲載)