〈コラム〉「そうえん」オーナー 山口 政昭「医食同源」

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マクロビオティック・レストラン(40)

それほど臆病な人間だから小学生のころから健康に関する新聞記事はよく読んでいました。冷水摩擦を始めたきっかけも、小学生のころ九大の医学部長と西鉄ライオンズの新人選手との対談で部長が冷水摩擦を選手に勧めているのを新聞で読んだからでした。医学部長の言葉は当時の私に神の声のように聞こえ、子供のときのタオルに始まって、海外に行ってからはへちまで擦り、四十をすぎてからは身体にやさしく素手で擦っているが途中の何年間を除いて、もう何十年とつづけているせいで風邪はあまりひきません。医学部長は正しかったわけです。
「そうえん」を見つけてからは、ちょっと遅い昼食をそこでとってから仕事に行くのが習慣になりました。めしは職場で食べられるから、わざわざ、お金を出して食べることもないのですが、そういう問題ではありません。お金で健康が買えるとしたら、それほど、すばらしい買い物はないのですから。
ふつう、ひとりではレストランに入りにくいものですが「そうえん」は一人客が多く、シャイな私でも気軽に入れました。私が食べていたのは玄米とソテーした野菜。たまに豆、ひじき、味噌汁、キャベツサラダのうちのどれか一品、加わることもありましたが基本的には玄米とソテーした野菜でした。必ず食べるのが玄米と野菜、それにひじきか豆を交互に食べていた。
ランチのウエーターをしていたのが、頭に赤や青のバンダナを巻いたオーナーのHさんでした。日本人かどうかわからなかったので、しばらくは英語で注文していました。
「S茶屋」で食べる白米より、ずっとおいしかった。玄米のエキスが血液となって身体の隅々まで運ばれ、細胞の一つひとつまできれいになってゆくのがわかるようでした。マクロビオティックというのは、簡単にいえば、肉食、乳製品、白砂糖などを排し、なるべく近郊でとれた野菜や穀物(特に玄米)を中心に伝統的な調理法でバランスよく食べる、という食事法です。
(次回は1月第2週号掲載)
〈プロフィル〉山口 政昭(やまぐち まさあき) 長崎大学経済学部卒業。「そうえん」オーナー。作家。著書に「時の歩みに錘をつけて」「アメリカの空」など。1971年に渡米。バスボーイ、皿洗いなどをしながら世界80カ国を放浪。

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