〈コラム〉カーボローディングと真逆?新しいトレーニング法 低糖質補給の訓練法に注目

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日本クリニック「医療の時間」第22診

皆さん、普段どのような方法でエクササイズされていますか? 今回はあるトレーニング方法のとても興味深いリサーチをご紹介したいと思います。
昔からアスリートらは、普段の訓練で実際にレースでするようなできるだけハードな練習をしてきました。このような訓練では持久力を持たせるために多量のグリコーゲン(炭水化物)を練習前、休憩中、そして練習をしながら補給します。これをカーボローディングといいます。
しかし近年、科学者らは、賢いトレーニング方法でより大きな結果を導き出す、新しいアプローチを提案しました。研究報告によると、10週間訓練されてない被験者に、片足をグリコーゲン貯蔵量の高い状態、もう片方の足を貯蔵量の低い状態に分けてトレーニングを行わせた結果、それぞれの足で同じセッションを行ったにもかかわらず、グリコーゲン貯蔵量の低い方の足が筋肉量の変化、運動可能量ともに勝りました。
その他の研究では、絶食状態(朝食前の水分補給のみ)の運動は、カーボローディングしながらの運動よりも、筋肉の性質を変化させるのに良いことが分かりました。ただし、この場合、運動能力の増加は見られませんでした。特に注目すべきは、デスクワーク職の被験者には顕著に健康面での向上が見られた点です。しかしながら、訓練されたアスリートの運動能力についての結果は、まだ議論されている段階です。長年の研究の中で、低糖質補給状態での運動は、よく訓練されたアスリートらに特に変化を見せませんでしたが、この状態での筋肉の性質の順応力は高まりました。一方で、この方法は、高負荷な力を出す運動能力の妨げにもなったことは重要なポイントです。
この状況は高地でするトレーニング方法と似ています。過去の研究では、このトレーニングで良い結果を得られることから、この特別な訓練方法を推奨していました。しかし、後々になってこの訓練法は、トレーニングの鍵となる高負荷の訓練ができないというマイナス面があることが分かってきました。アスリートらは高地での訓練と海抜ゼロメートルでの訓練を組み合わせることで、この問題を解決し、高地での訓練を短期間にすることで、高負荷のセッションを海抜ゼロメートルでも妨げなしに行うことができるようになりました。このやり方は、どのようにして低糖質補給のトレーニング方法から潜在的な利益を得るかの鍵となるでしょう。
ところで最近の研究で、カーボローディングはケガや病気のリスクがあるというマイナス面が新たに分かっています。アスリートらは何が一番良い糖質補給の自己プログラムの配分か、いろいろ試してみると良いといいでしょう。
ちなみに、低糖質補給状態での訓練は緩やかな運動、もしくは運動の初めに行うのが理にかなっているでしょう。逆に大会に向けてピークに達するハードな運動は、カーボローディングした状態でトレーニングするのが理想的です。たくさんの訓練法と同様に、問題解決には個々人に合わせたトレーニングを組む必要があります。皆さんも自分の体や健康状態と相談しながら効果的な食事法を取り入れたトレーニングをしましょう。
(次回は2月18日号掲載)

drvitale〈今回の執筆者〉ケン・ヴィターレ医師/Kenneth C. Vitale, MD
日本クリニック/15W 44th St. 10FL. NY,NY 10036
スポーツ医学、理学医療科、リハビリテーション科。NY大学医学部卒業。NYU Harkness Center for Dance Injuriesにて資格取得。アメリカ大学スポーツ医学会(ACSM)、東京大学、欧州などで講演を行う。

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