〈コラム〉空いた時間のちょっと運動でも効果あり? 10分以下でも、週150分の運動なら中性脂肪などが低下

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日本クリニック「医療の時間」第34診

健康のために成人には、中〜強度の運動を最低、週に150分することが米国心臓学会によって推奨されています。従来、30分の連続した運動を週に5回行うことが必要とされてきました。最近発表されたリサーチによると、10分ごとに行う適度な運動でも推奨される許容範囲だということが分かってきました。しかし、さらに最近の研究で、1セッションが10分以下の運動の場合でも、まとまった運動をすることが難しいデスクワーク中心で肥満な成人に対しては、健康への効果があることが判明しています。
連続した運動と、数回に分けての短い時間の運動を比較した従来の研究調査によって、総合運動時間が同じ場合、心肺機能の向上効果はほぼ同じというだということが判明しています。しかしながら、その他の複雑な健康の相乗効果、例えば、心臓疾患の軽減などについては、この一日に数回かけて行う短時間運動のデータは、まだ不足していて、明確な効果は分かっていませんでした。
近年のスマートフォンブームの恩恵で、最近運動時に使用できる、加速度計器(加速度センサー)のアプリが人気を博しています。これらの加速度計器では、万歩計のようにスマートフォンを装着(常時所持)することで、一日の生活の中での運動量や、加速度、向き、強さなどの詳しいデータが簡単に測定でき、従来の運動時間やそれに伴うカロリー消費量計算以外にも優れた計測ができます。
ことし1月、ハーバード大学のフラミンガム心臓研究の研究者は、短時間運動についての研究結果を出版しました。研究内容は、加速度計器使用時においての中〜強度の身体運動と心臓疾患リスクとの関係についてで、研究の結果、研究対象のほとんどが、従来推奨されてきた「1日30分、週に150分の運動」を行いませんでした。しかし、加速度計器などのツールを使用した人のうち半分が10分以下の短い運動ですが最低、週150分以上の運動を行ったことが分かりました。研究結果によると、この場合でも、中性脂肪の低下、BMI(肥満度指数)の低下、ウエストの減少、肥満の有病率の低下、耐糖能(ブドウ糖摂取時に血糖値を一定に保つ調節機構)障害率の低下させることが判明しました。
この結果からも分かるように、たとえ短い時間の運動でも最低、週に150分のエクササイズから、心臓疾患リスクの低下やその他さまざまな効果があることが分かります。この研究は、短時間運動についての最初の研究で、これからまだまだリサーチは必要でしょう。しかし座っていることの多い生活習慣の米国では、肥満率が増加し続けています。これらの短時間運動に効果があるという知識を広めることは、現代人にとって極めて重要でしょう。
まとまった運動をする時間がない現代人、それを言い訳にせず、短い運動でも「塵(ちり)も積もれば山となる」です。皆さんも、ちょっと空いた時間を有効活用して、Let’s Exercise !
(ハーバード大学フラミンガム心臓研究の研究報告から)
(次回は3月23日号掲載)

drvitale〈今回の執筆者〉ケン・ヴィターレ医師/Kenneth C. Vitale, MD
日本クリニック/15W 44th St. 10FL. NY,NY 10036
スポーツ医学、理学医療科、リハビリテーション科。
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