〈コラム〉法律の専門家がお答えします

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今週は「シンデル法律事務所」

移民局による最近のビザ申請審査の厳しい現状(その4)

米国の政策調査機関であるthe National Foundation for American Policy(NFAP)が最近発表した米移民局によるビザの審査状況に関する調査結果に関し、これまでいくつか記事を紹介してきました。とりわけL―1Bビザに関してはその厳しさが際立っております。
このL―1Bのケースにおいて、移民局審査官が、会社の特定の専門分野における専門知識をもつ従業員は一つの会社に3●5人以上も存在するはずはないという判断のもと申請が却下されたという雇用主からの情報もあります。実際、移民法上、L―1Bビザいう専門知識をもつ従業員の数は会社の中での一握りであるべきである、という具体的人数の制約はありません。例えば、仮に高い専門知識を要する専門分野やプロダクトラインで雇用を受けている従業員が数千人もいるような会社であれば、仮にその専門知識を持ち合わせる従業員が3●5人に制限されるとすれば、会社の経営さえも機能しないこととなります。
L―1ビザは、既に他国の親会社、子会社、または関連会社で雇用を受けている従業員が米国の会社で一時的に企業内転勤者として雇用を受けるために発行されるビザです。このような条件のものと、L―1ビザ発給が、なぜ当事者とは無関係の米国人の失業率の高さに悪影響を与えている事になるのか疑問を覚えるばかりです。
これらデータおよび移民局申請の現状から分析すると、移民局その他関連政府機関は有能な外国人労働力のビザ発給をより難しくしており、近年の却下および質問状発行割合の増加、および認可されるにしても質問状が届くなどして認可まで大変長い時間が掛かってしまう可能性の高い現状において、ビザ発給および時間的にも確実性の無いビザ申請そのものを避ける企業も増えることでしょう。そして、米国の移民システムに嫌気を指した外国企業及び個人が、その代わりに米国国外での国々での海外ビジネス活動を行うことも予想され、米国の国際競争力に悪影響を及ぼすことにもなりかねません。
とはいえ、この現状でも申請を行わなければならない企業もあります。今後申請を考えている企業はより詳しく、より注意深い申請書作成がより重要となり、移民法に詳しい専門家と密に戦力的に申請作業を進めることが高く望まれるでしょう。更に、米国での従業員の雇用開始日やプロジェクトの開始日が決まっている場合は、できる限り早めに行動を起こす、または開始日についても柔軟な対応ができる体制が求められることでしょう。
(次回は12月8日号掲載)

(「WEEKLY Biz」2012年11月10日号掲載)
sindel_faceup〈今週の執筆者〉 弁護士 デビッド・シンデル(David S. Sindell – Attorney at Law) NY、NJ州公認弁護士、NY弁護士会会員 アメリカ移民法弁護士協会会員 1994年NYマンハッタンにシンデル法律事務所を設立。移民法を専門に扱う。以後1万件以上のビザ、永住権等の取得実績を誇る。2011年4月にはCA州シリコンバレーにもオフィスを設立。NY、CA、日本を中心とした法律セミナーの多数開催をはじめ、多数の日系情報誌にも法律記事を連載中で、在米日本人を中心に広く好評を得ている。米国在住の日本人とも交流が深く、米国を拠点に直接日本語で法律相談にも応じている。 〈今週の執筆事務所〉シンデル法律事務所 7 W. 36th St., 14Fl. NYC Tel:212-459-3800 Email:slony@sindelllaw.com Web:www.sindelllaw.com
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