〈コラム〉法律の専門家がお答えします

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senmonka

今週は「シンデル法律事務所」

多国籍企業の管理職とマネジャーの
EB1―3カテゴリーでの永住権取得

前回、米移民局はAdjudicator’s Field Manual(AFM)に基づき、米国外の外国法人の「支店」(branch)はL―1A管理職およびマネジャーの雇用ベースでの永住権申請(I―140移民申請を通しての永住権申請)をサポートできないと解釈している旨を紹介しました。しかしながら右記の移民局AFMの条項について、実は下記の移民国籍法―第203(b)(1)(C)項そのものに矛盾しているのです。
第203(b)(1)(C)―多国籍企業の管理職とマネジャー:該当カテゴリーでの申請そして米国に入国する前の3年間のうち、1年以上管理職やマネジャーとして関連会社に雇われていたことがある外国人で、管理職やマネジャーとして米国の同じ雇用主や子会社、または関連会社で業務に従事し続けるために米国に入国する外国人は、この条項の対象となります。
この条項には、外国人の管理職やマネジャーが米国に存在する同じ会社においても、業務に従事し続けることが可能であると明記されています。つまり、同じ会社に従事するということは、外国法人の米国支店も外国人の管理職やマネジャーの永住権スポンサーになることができると解釈できるのです。
なお、移民局によるATMの誤った解釈はThornhillケースそのものからも示すことができます(当ケースにつきまして詳しくは前回号をご覧ください)。Thornhillケースの件では永住権のスポンサーが彼自身のHビザを申請していました。このケース当時の以前の法律では、Hビザ保持者は、放棄する意思のない外国の居住地があるということを証明する必要がありました。そのため外国の居住地を放棄する意思がないことは、米国に永住する意思と矛盾することから、スポンサー会社は彼の永住権をスポンサーできないと判断されたのです。
しかし、Thornhillケース(非移民ビザ申請ケース)とは異なり、米国外の外国企業の支店は、所在する州の州法によって事業を行うことが許可されていれば、永久的に州で事業を行い続けることができることになっています。このように、支店が外国人の管理職やマネジャーの永住権申請をすることを禁止することは、第203(b)(1)(C)項に矛盾しているとも言えます。更に、対象となる同じ支店をスポンサーとして問題なくLビザを申請し、認可を受けているという事実にも矛盾します。またAFMでは、支店であるスポンサーが多国籍企業の管理職、マネージャー以外の第2、第3申請カテゴリーでの永住権申請(第1カテゴリー(EB1―3)では必要とされていない、労働局を通しての申請は必要)は禁止していない点もその矛盾を示しています。
もしもこのような解釈の違いによって申請が却下された場合には、それを問題視すべきです。これは、移民局が支店の管理職やマネジャーの永住権の権利妨害をし、外国企業が米国で長期活動を不必要に制限していることにあたるでしょう。
(次回は3月9日号掲載)

(「WEEKLY Biz」2013年2月9日号掲載)sindel_faceup〈今週の執筆者〉 弁護士 デビッド・シンデル(David S. Sindell – Attorney at Law) NY、NJ州公認弁護士、NY弁護士会会員 アメリカ移民法弁護士協会会員 1994年NYマンハッタンにシンデル法律事務所を設立。移民法を専門に扱う。以後1万件以上のビザ、永住権等の取得実績を誇る。2011年4月にはCA州シリコンバレーにもオフィスを設立。NY、CA、日本を中心とした法律セミナーの多数開催をはじめ、多数の日系情報誌にも法律記事を連載中で、在米日本人を中心に広く好評を得ている。米国在住の日本人とも交流が深く、米国を拠点に直接日本語で法律相談にも応じている。 〈今週の執筆事務所〉シンデル法律事務所 7 W. 36th St., 14Fl. NYC Tel:212-459-3800 Email:slony@sindelllaw.com Web:www.sindelllaw.com
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