海外赴任で「完全にアウェー」だった上司がコーチングで適応期間短縮

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〝トランジション〟(3)ロールマッチング

「対話で変える!」第23回

こんにちは。COACH A竹内です。今回は、アメリカに赴任したばかりの日本人駐在員Aさんのお話をご紹介します。
Aさんは、優秀な課長として東京本社で活躍し、将来の有望なリーダー候補でした。半年ほど前に念願の海外赴任の辞令が下り、アメリカ(テキサス)駐在となりました。
着任前、本社で簡単なコンプライアンス研修を受け、ニューヨーク駐在経験のある先輩社員の話も聞いたAさんは、準備万端、意気揚々とテキサス支社での勤務を開始しました。
しかし、赴任後まもなく、先輩社員に聞いたニューヨークの様子とも、東京とも違った周りの反応にとまどいました。
テキサス特有のアクセントで思ったほど意思疎通ができないAさんに部下がうんざりした表情を浮かべたり、勤務時間帯が早い慣習にペースを調和できなかったりすることが起こりました。
「完全にアウェーだな…」
さらに、部下が30人程度であった本社時代に比べ、テキサス支社ではローカル社員70人以上を率いる事業部長職でした。本社と支社の規模の違いはあるとはいえ、課長と事業部長ではその責任や役割も大きく異なり、「子会社だし、なんとかなるだろう」という当初の思いは、大きく誤っていたのかもしれないと思うようになりました。
ハーバード大学のリサーチ(※)によると、人事異動したマネージャーが新しいポジションに適応(トランジション)するには、約15カ月から18カ月ほどかかることがわかっています。駐在期間が3年から5年だとすると、駐在員本人にとっても企業サイドにとっても、これを短縮化できれば、非常に有効な投資になります。
「悩んでいるうちに時間は過ぎていくので、一刻も早く新しい環境に馴染んで、本来のパフォーマンスを発揮したい」
コーチングによる成果の一つとして、適応に要する期間を短縮することが挙げられます。Aさんは、部下のうんざりした表情に過敏に反応するのではなく、それを乗り越え信頼関係を築くにはどう接すればいいのか、現地の労働慣習と本社とのコミュニケーションを両立させるにはどう時間を使えばいいのかについて、コーチングの中で自らの態度や行動パターンを改善していきました。
「自分が部下からどう見えているのかをアンケートやリサーチで把握し、より良い方法や手段を見つけて試す、それに対するフィードバックを受けてさらに改善する、というプロセスで、ようやく本来の役割と責任を果たせるようになってきた気がします」
コーチングでは、駐在員の皆さんが赴任後早い時期にトップギアのパフォーマンスを発揮できるよう、支援していきます。世界レベルでの競争社会を勝ち抜いていくためにも、Aさんのようにコーチングを有効に活用していただきたいと思います。
(※)Maria Yapp, 2004 "How can “role transition management” transform your company?", Industrial and Commercial Training, Vol. 36 lss: 3, pp.110 – 112
(次回は10月第4週号掲載)

 

「COACH A」竹内 健【執筆者】
竹内 健(たけうち・たけし) エグゼクティブ・コーチ(COACH A USA 取締役 CFO)
PricewaterhouseCoopers LLPにて異例の日米5都市を異動しつつ、公認会計士として日米欧の企業や経営者へのサポートを行う中で、ソリューションの提供だけでなく対話を通じた人への投資があってはじめてクライアントのパフォーマンスが発揮されることを痛感し、これまた異例の会計士からの転身をはかり現職

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