代理出産の歴史(23)コロナ禍で赤ちゃんを迎えに行けない状況に

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代理出産28

「米国最先端臨床現場から」海外治療コンサルティングリポート 第100回

代理出産医療コンサルタントである弊社にいただくお問い合わせ件数でトップ5に入る代理出産について説明しています。2013年のインド代理出産の外国人依頼に対する取り締まりによる実質的な閉鎖、14年の秋のタイでの商業代理出産、卵子提供、男女産み分けなどの着床前診断などの先進生殖医療の禁止、と、この時期から世界中の代理出産依頼が難しい状況へと世界全般が変化し、商業代理出産が合法であったメキシコへ移動したものの、その大移動が問題になり、外国人による代理出産依頼は禁止され、世界中で商業代理出産の取り締まりが強化されました。批判が表面化している中、合法ではあるものの高額である米国を避ける依頼者が、数少ない商業代理出産が合法であるジョージア、ウクライナ、そしてロシアに集中し始めたところでコロナ禍が勃発したことを前回=2月6日号掲載=まで説明いたしました。

20年春以降、コロナ禍により、世界中の通商が完全に止まったことが、代理出産にも大きな影響を与えました。コロナ禍の拡大を抑えるために、各国境閉鎖が実施されたため、通商はもちろん、人の動きが完全に制約されたためです。延期せざるを得ないビジネスや商品は待つことは可能ですが、命ある赤ちゃんは誕生を待つことができず、依頼者は赤ちゃんを速やかに迎えに行けない、という状況を作り出しました。

通常は、依頼者は、赤ちゃん誕生前に代理出産の地へ入国し、誕生を待ちます。健康に出生した場合、新生児検診を経て、出生の数日後には親権を持つ依頼者に引き渡され、赤ちゃんの親として人生を開始し、依頼者が赤ちゃんの出生登録を行い、出生証明書の取得する、というのが契約の流れです。しかし、依頼者が入国できない場合、赤ちゃんの責任を持ち、世話をする親が不在、ということになります。赤ちゃんの出生を心待ちにしていた依頼者も渡航不能、赤ちゃんが出生した地に入国不可能、そして、赤ちゃんの所在の不安や、実質的に赤ちゃんの世話に関する懸念問題もあり、精神的、経済的な負担が生じる、という予測できなかった事態を招きました。

(次回は4月第1週号掲載)

さくらライフセイブアソシエイツ代表・清水直子【執筆者】清水直子しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。

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