〈コラム〉お金の時間的価値

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Nagano Morita a Division of Prager Metis 日下武「ビジネスのツボ」 第112回

先日、ある友人が「事業を始めたいんやけど、10万ドルほど貸してくれるお金持ちの人、どこかにおらへん?」と言ってきました。5年後には全額返金できるという約束付きということですが、「投資家さんなら何人か知っているけども年の利益率はどれくらい?」と聞くと、「えっ。5年後に10万ドル返せばええんとちがうん?」ということでした。

普通、投資家さんは何か利益がないとお金は投資してくれません。会計の世界ではお金には時間的価値があると考えます。たとえば、金融商品には金利というものがあり、投資をすると時間が経つにつれてお金が増えるという考え方になります。仮に10万ドルを年10%の利率の金融商品に投資したとします。10万ドルの元金をそのままにして、5年後にはいくらになっているでしょうか。10万ドルの10%は1万ドルだから、1万ドルの5年分で5万ドルの利益、だから15万ドルということにはなりません。

会計の世界では、複利という考え方をします。これは年々の利益も含めて、10%を計算するということです。たとえば、1年目の終わりには10万ドルの投資額は1万ドルの利益を含め11万ドルになっています。そして2年目はその11万ドルに10%の利益を計算し、3、4、5年目も同じように利益を含めて計算します。そうすると、5年目には、利益は5万ドルではなく、約6万1000ドルになります。

前の話に戻りますが、もしこの投資家が利率10%の投資物件と友人への投資を比較するのであれば、5年後に16万1000ドル以上のリターンがないと面白くないという考え方もできるかもしれません。このように複利や時間的価値を考えると良い投資物件があれば、始めるのが早ければ早いほど効率的にリターンが稼げるかもしれません。

時間的価値を言う言葉を考えると人生にも言えます。個人事業をしたいという相談を受けることがあります。聞いているだけでワクワクするような素晴らしい事業計画を考えている人がたくさんいるのですが、結局は独立しないケースがほとんどです。理由は、考えているうちにリスクが怖くなった、現在の仕事が忙しいからまた来年考えます、考えているうちに他の人が同じようなビジネスを始めて成功したなど、悔しい想いをしている人もいます。会計の世界でお金に時間的価値があるように、限られた人生にはそれ以上に貴重な時間的価値があります。もし、ワクワクするような事業計画を考えていたら思い切って飛び込んでみてはいかがでしょう。みなさまの成功をお祈りいたします。

(次回は7月第2週号掲載)

〈プロフィル〉 日下 武(くさか たけし) Prager Metis CPAs Boston/NJ マネージャー。大手日系食品商社での営業経験を生かし、顧客の立場になって、全体的なビジネス、会計、税務相談を受けている。メーカーからレストラン、リテーラーマで、幅広く顧客を持つ。

ウェブpragermetis.jp Tel:201-363-0050 E-mail:tkusaka@pragermetis.com 2125 Center Ave., Suite 104, Fort Lee NJ

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