帰国生の高校編入

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編入する学年や時期によっては苦労することもある

「在米親子にアドバイス」日米の教育事情
米日教育交流協議会(UJEEC)・代表 丹羽筆人

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高校1年生の4月を過ぎてから高校に入学する場合は編入学となり、狭き門となります。それは、高校には入学定員があり、原則として欠員が生じた場合のみ編入学の受け入れを行うためです。予め編入生のための定員を設けている高校は多くはありません。また、受け入れ可能な学年は2年生までという高校が目立ち。3年生への編入学が可能な高校は、かなり少ないのが実情です。
また、編入学は、常時受け入れがあるとは限りません。受け入れ時期は、年度初めの4月や夏休み明けの9月の2回のみと定めている高校が目立ちます。冬休み明けの1月も加え、3回以上受け入れを行う高校もありますが少数です。現地校の学年が終わる5月や6月に帰国する場合、編入学は9月まで待たねばならなくなります。保護者の勤務先の異動時期が4月や9月でない場合にも、その後の受け入れ可能時期まで待たねばなりません。待っている期間は、どの学校にも所属しないことになりますので、この期間があまり長いと高校の単位取得に影響を及ぼしかねません。しかし、中には、編入学を随時受け入れ可能な高校もあります。

次に、編入学の出願資格についても注意が必要です。多くの高校が海外の学校で2年以上在籍していたことを求めています。また、高校入学の出願資格に9年間の学校教育課程を修了していることが必要な高校があるように、高校2年生への編入学には現地校の10年生修了を、3年生への編入学には現地校の11年生修了を求めている高校もあります。例えば、日本の学齢では高校2年生でも、現地校の10年生を修了していない場合には、高校1年生に編入学しなければならないケースもあります。

編入学の試験は、国語、数学、英語の3教科の学力試験を課す高校が目立ちます。試験問題の出題範囲は、その高校の同学年の生徒が履修しているところまでとなります。編入学の試験問題は、そのための専用の問題ではなく、編入学試験の直近の定期テストの問題が使用されることもあります。編入学希望の高校の教科書を入手したり、進度についての情報をキャッチしたりするとよいでしょう。国語は、現代文のみでなく、古文や漢文も含まれますし、数学の進度が速く、1学年分進んでいる高校もあります。また、高校によっては理科(物理、化学、生物など)や地歴・公民などが課されることもあります。

また、編入学の試験の合否は、受験生が編入学後に授業についていけるかどうかを見極めて判定されます。受験生が自分しかいなかったとしても、合格できるとは限りません。さらに、編入学の試験は、帰国生のためだけに行われるとは限りません。国内在住の編入学希望者とともに試験が実施されることもあります。国内生と同じ土俵で戦える実力を養うことが必要です。

そして、編入学試験の受験は、他校との併願ができないケースもあります。第1志望に合格できなかった場合に、第2志望以下の高校を受験することになりますが、その際に、すでに定員が埋まってしまうということもあります。志望校は多めに考えておく必要もあります。

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最後に、編入学した場合の大学受験について触れます。

帰国生大学入試では、ほとんどの国公立大と早稲田大や慶應義塾大などの一部の私立大が、海外の高校の卒業を受験資格としています。したがって、これらの大学の受験資格はありませんので、国内生と同じく一般入試を受験せねばなりません。また、海外の高校卒業が必要ない場合でも、日本の高校での在籍可能な期間が1年半以内とか2年未満という大学が目立ちます。中には1年未満という大学もありますが、高校3年生への編入学が難しいことを考えると厳しい条件だと言えます。いずれにしても、高校1年生で編入学した場合には、帰国生大学入試で受験できる大学は、かなり少ないというのが実情です。
帰国生大学入試では、受験生の負担の軽減が配慮されており、文系学部受験者は小論文と英語のみ、理系学部受験者は数学と理科のみを受験すればよいことになっています。また、国公立大受験者は大学入試センター試験が免除されています。このような配慮は受けられませんので、日本の高校に編入学した場合は、厳しい大学受験を乗り越えねばならないかもしれません。

ただし、帰国生入試や一般入試だけでなく、推薦入試やAO入試、グローバル入試などを視野に入れると、受験の選択肢が広がります。推薦入試は、高校の成績が重視される入試です。AO入試は、高校時代の活動や志望理由が重視される入試です。グローバル入試は、AO入試と同様の入試ですが、特に英語力が重視されます。また、国際バカロレア資格取得可能なプログラムを設置している学校に編入し、同資格を取得すれば、国際バカロレア入試が受験できます。そして、国内のインターナショナルスクールに編入学して12年生を卒業すれば、海外の高校と同様に、すべての授業を英語で受けられますので、近年増加傾向にある英語プログラム(英語の授業のみで学位取得のできる)の大学を受験することもできます。これらの入試は、多くが書類審査と面接で合否判定が行われるので負担を軽減することができます。

(写真:名古屋国際中学校・高等学校)

丹羽筆人【執筆者】にわ・ふでひと 河合塾在職後に渡米し、北米の補習校・学習塾講師を歴任。現在は、「米日教育交流協議会(UJEEC)」の代表として、「サマー・キャンプ in ぎふ」の企画・運営、河合塾海外帰国生コース、名古屋国際中学校・高等学校、名古屋商科大学の北米担当などを務める。他にデトロイト補習授業校講師(教務主任兼進路指導担当)
◆米日教育交流協議会(UJEEC
Phone:1-248-346-3818
Website:www.ujeec.org

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