日本語での学習に身が入らない子ども

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帰国後の高校進学を意識して学習の動機づけをしたい

「在米親子にアドバイス」日米の教育事情
米日教育交流協議会(UJEEC)・代表 丹羽筆人

お子さんが日本語での学習に身が入らないというお話をよく耳にします。日本への帰国予定のない家庭なのかというと、そうではなく数年後には帰国する家庭ということもあります。現地校での英語での学習の方が楽しくなったのでしょうから、これは決して悪いことではありません。しかし、英語での学習と日本語での学習の両立には努力が必要であり、それが少々足りないというのも実情です。

帰国時期が小学校低学年以下という幼少時であれば、日本語力が不十分であったとしても、数か月もすれば順応できると思いがちです。しかし、まだ海外に来て間もなく、現地校での英語の学習に不慣れだという理由で、日本語での学習を全くしない状態が続くと、漢字の読み書きはもちろん、日本語での理解力が停滞してしまいます。したがって、帰国後に学年相応の日本語での学力が定着していないと、日本の学校の学習についていけないということになりかねず、苦労することになります。

また、小学校高学年や中高生で帰国する場合は、小学校低学年までに帰国するよりも、もっと苦労することもあり得ます。ご存じのとおり、日本では高校に進学するためには入学試験に合格しければならないからです。そのため日本の公立中学校では、進路や受験対策指導が担任の先生によって行われ、高校進学についての話題が提供され、受験する高校の選択をするよう促されます。また、進学希望の高校に合格するためには、入学試験でどの教科が課され、それぞれどの程度の得点を取る必要があるのかという情報も提供されます。そして、模擬試験を受験することにより、その時点での自分の実力との差や合格可能性などの情報を得ることもできます。したがって、どの教科のどんな分野に力を入れて勉強しないといけないのかということが自覚でき、学習に励むことができます。つまり、高校進学という目標が明確になることが勉強の動機づけになっているのです。

一方、北米では高校も義務教育なので住所地の学校に進学できるため、日本に比べると進路についての意識が低いと感じます。現地校では進路や受験対策の指導を受けることはできませんので、保護者がその役割を担う必要があります。帰国後に公立中学に進学するとしても、その後に進学する高校は自分で決める必要があることを伝え、親子でどの高校に進学したいのかを話し合って志望校を決めることをお勧めします。志望校が決まれば入試で受験する教科が分かり、そのために特にどの教科の学習に努力しなければならないことが自覚できるでしょう。

また、高校入試では、英検に合格していると有利になることもあります。英語のリスニングやスピーキングのテストを導入する動きもありますので、英検対策の学習が役立ちます。英検は海外でも受験できますし、英語圏に暮らしているときは英語力の伸びが期待できます。英検〇級合格という目標を設定して学習することもお勧めします

お子さんが小学生で中学受験はせず、公立小学校に転入する場合でも、数年後に中学生になると、中学1年生から9教科を履修することになり、それらの成績が高校進学に影響することを話しておくとよいでしょう。中学校の各教科の成績向上のためには、小学校での履修内容を習得する必要があるので、今から力を入れて勉強することが大切だと自覚させるのがよいでしょう。

このように、帰国後には高校進学という関門があるので、海外に暮らしている今から、日本語での学習に力を入れる必要があることを親子で自覚して、親子でともにに努力していただきたいと思います。

最後に、帰国時までに学年相応の日本語での学力が習得できなかった場合には、インターナショナルスクールに進学するという方法もあります。ただし、お住いから遠い、学費が高額ということもあります。また、中学生までしか受け入れがない、高校生の受け入れがあったとしても、日本の高校卒業資格がなく、日本の大学が受験できないなどの問題が生じることもありますので、ご注意ください。

(写真提供:名古屋国際中学校・高等学校)

丹羽筆人【執筆者】にわ・ふでひと 河合塾在職後に渡米し、北米の補習校教員・学習塾講師を歴任。「米日教育交流協議会(UJEEC)」を設立し、「サマー・キャンプ in ぎふ」の企画・運営、河合塾海外帰国生コース北米事務所、名古屋国際中学校・高等学校、名古屋商科大学北米担当、サンディエゴ補習授業校指導教諭を務める。
◆米日教育交流協議会(UJEEC)
Website:www.ujeec.org

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