増加する国際バカロレア(IB)認定校

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日本の高校で学び、世界中の大学への進学を目指すことができる

「在米親子にアドバイス」日米の教育事情
米日教育交流協議会(UJEEC)・代表 丹羽筆人

日本では国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)認定校が増加しています。2023年6月30日時点での認定校数は211校となり、政府が提唱した200校以上にするという目標が達成されました。

国際バカロレア(IB)は、国際バカロレア機構(本部ジュネーブ)が提供する国際的な教育プログラムです。スイスに世界各国から集まる国際機関の職員の子どもたちに対し、世界共通の教育を行うために生まれましたが、現在では世界中に広がり159以上の国・地域の約5500校で実施されています。

国際バカロレア(IB)の教育区分と各々の日本における認定校数は以下のとおりです。
・PYP(Primary Years Programme)3-12歳《認定校:59校、候補校:32校》
・MYP(Middle Years Programme)11-16歳《認定校:35校、候補校:11校》
・DP(Diploma Programme)16-19歳《認定校:67校、候補校:7校》
・CP(Career-related Programme)16-19歳

また、国際バカロレア(IB)の教育目標は以下のとおりです。
1)子どもたちが世界の複雑さを理解し、それに対処できるよう育成する。
2)未来に対して責任ある行動をとるための態度、及びスキルを、子どもたちに身に付けさせる。
3)国際的に通用する大学入学資格(国際バカロレア資格)を与え、大学進学へのルートを確保する。

このように、小学校就学前の学齢から学ぶことができますが、IBDP(国際バカロレア・ディプロマ・プログラム)認定校では、国際バカロレア資格を取得できるというのが魅力です。では、IBDPでは実際にどんなことを学習するのでしょうか。

IBDPでは2年間で、必修3科目、選択6科目、合計9科目を学習します。これらの科目を日本語で学習する学校と英語など外国語で学習する学校があります。

必修科目には、課題論文・知の理論・創造性/活動/奉仕という科目があります。課題論文は卒業論文のようなもので、英語で4000語の論文を執筆します。卒業前に短期間で取り組むものではなく、2年間で論文の書き方や必要なスキルを身につけながら、じっくり論文の作成に取り組みます。知の理論は文字どおり知というテーマについて探求をする科目で、わかりやすく言うと思考力を鍛える科目です。創造性/活動/奉仕は、いわゆる課題活動です。取り組む活動は生徒それぞれで、自分の興味関心を踏まえ教員と相談して活動内容を決めていきます。

選択科目は、言語と文学(母国語)・言語習得(外国語)・個人と社会・理科・数学・芸術の6つのグループから1科目ずつ選択し、2年間で学習します。ただし、「芸術」(グループ6)は他のグループからの科目に代えることも可能となっています。また、大学やその後の職業において必要となる専門分野の知識やスキルを、大学入学前の段階で準備しておく観点から、6科目のうち、3~4科目を上級レベル<HL(Higher Level)、各240時間>、その他を標準レベル<SL(Standard Level)、各150時間>として学習します。

1)言語と文学(母国語):「言語A:文学」「言語A:言語と文学」「文学と演劇」SLのみ
2)言語習得(外国語):「言語B」「初級言語」SLのみ
3)個人と社会:地理、歴史、経済、ビジネスと経営、情報テクノロジーとグローバル社会、哲学、心理学、社会・文化人類学、世界の宗教(SLのみ)、グローバル政治
4)理科:生物、化学、物理、コンピュータ科学、デザインテクノロジー、スポーツ・エクササイズ・健康科学、環境システムと社会
5)数学:「数学:解析とアプローチ」「数学:応用と解釈」
6)芸術:音楽、美術、ダンス、フィルム、演劇
*学校によって設置科目が異なる場合があります。

IBDPでは、年に2回実施される世界共通のテストを3年次に受験します。テストは45点満点で24点以上が合格となりディプロマを取得できます。IBのディプロマは世界共通の大学入学資格となり、世界中の大学へ進学を目指すことができます。高得点者は入学選考において有利となり、世界トップ大学を目指すために大きなアドバンテージになります。また、IBDP履修者を対象とした国際バカロレア入試を実施する大学も増加しているので、日本の大学進学を目指すこともできます。一方で、IBDPでの学習は高等学校の通常の課程よりも授業時数も多く、授業内容や課題などのハードルが高い、また学費も高額になるということなどもあります。認定校の状況を十分に確認することをお勧めします。

(写真提供:名古屋国際中学校・高等学校、国際高等学校)

丹羽筆人【執筆者】にわ・ふでひと 河合塾在職後に渡米し、北米の補習校教員・学習塾講師を歴任。「米日教育交流協議会(UJEEC)」を設立し、「サマー・キャンプ in ぎふ」の企画・運営、河合塾海外帰国生コース北米事務所、名古屋国際中学校・高等学校、国際高等学校、名古屋商科大学北米担当、サンディエゴ補習授業校指導教諭を務める。。
◆米日教育交流協議会(UJEEC)
Website:www.ujeec.org

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