〈コラム〉不動産業者への仲介手数料

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礒合法律事務所「法律相談室」

不動産の売却を考える所有者の方から、通常「ブローカー」とよばれる不動産業者の雇用に関する質問を頻繁に受けます。具体的には「家・アパートの売却を考えているのですが、不動産業者を通して売らなければならないのでしょうか」という質問ですが、ニューヨーク州では物件売却に伴う不動産業者の雇用は法的には義務付けられていません。物件価値の査定等も自身で業者を雇用することもでき、充実している数々の不動産専門のウェブサイトを使い購入者を得ることも可能です。誰にも頼らず自身でウェブサイトに物件情報を掲載し、数日以内に購入希望者を見つけ、その1カ月以内に売却が終了した所有者もいます。
不動産業者に売却の仲介を依頼する場合、コミッションと呼ばれる仲介手数料が発生します。仲介を業者に依頼する場合、ニューヨーク州では不動産所有者・売却予定者は不動産業者とリスティング契約書と呼ばれる同意書を締結します。その契約書に「仲介手数料はXXドル、もしくは売却金のXX%」「仮に別の不動産業者が購入者を発見した場合、その業者と仲介手数料を折半する」等の同意事項が規定されます。「口頭」でのリスティング契約に法的効果はありません。仲介手数料に関し「仲介手数料は物件が売却されて不動産仲介者に支払う」という認識する人が多いですが、この認識は間違っています。ニューヨーク州では判例法により「合法」にビジネスを営む不動産仲介者は、所有者が納得、同意する条件で該当物件の購入に前向き且つ購入可能な購入候補者を見つけた場合、不動産仲介手数料を受理する権利が発生します。つまり仲介者が購入条件を満たした購入希望者を一度見つけてしまえば、実際の売却の成立、又は物件売買契約書の締結に関係なく不動産仲介者には仲介手数料を受理する権利が発生します。所有物件が売れていない状況や最終的に取引が成立しない状況で不動産手数料を支払うことは所有者には大きな負担となります。この負担を避けるため、前記のリスティング契約書内に「物件の所有権が購入者に移って初めて仲介手数料の支払義務が発生する」等の追加項目を挿入することで実際に売却が成立し、所有者に売却金が渡って初めて仲介手数料を支払う事を契約化することができます。契約当事者の同意さえあれば判例法を契約により変更、制限することに問題はありません。物件所有者の多くはリスティング契約内容を読まずに署名してしまいます。そのため物件売却が成立していない、もしくは最終的に「おじゃん」となったにもかかわらず、仲介手数料のの支払を要求され、民事訴訟に発展する前に、リスティング契約書をしっかり読み、交渉・変更する、もしくは事前にリスティング契約内容を弁護士に確認してもらう事が自身を守るためにも重要です。 (弁護士 礒合俊典)

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(お断り) 本記事は一般的な法律情報の提供を目的としており、法律アドバイスとして利用されるためのものではありません。法的アドバイスが必要な方は各法律事務所へ直接ご相談されることをお勧めします。
(次回は10月第3週号掲載)
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