〈コラム〉さくらライフセイブアソシエイツ代表・清水直子「米国最先端臨床現場から」海外治療コンサルティングリポート 第23回

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着床前診断23~最新の性染色体(男女産み分け)と22対の常染色体の着床前診断方法(11)~

フレッシュ受精卵移植と冷凍受精卵移植における成功への分析(3)

今までの伝統的な観念である“フレッシュ受精卵は間違いなく冷凍受精卵より優れる”とされることと矛盾される冷凍受精卵を別サイクルで移植することは悪いニュースではない、という最近の臨床結果の背景の説明を開始して3回目のリポートとなりました。
前回、卵胞を排卵促進剤によって刺激するサイクルと同サイクルで移植を行うことは、排卵促進剤により、人工的にホルモン(E2とP4)を上昇させることにより、着床を失敗させる一因となるとお伝えしました。
そのため、最近では、一旦、受精卵を冷凍(凍結)し、冷凍受精卵移植サイクルとして、別のサイクルで移植する方法論が多く取られています。特に、着床前診断を希望し、胚盤胞(受精卵デー5、6の受精卵)での生体検査を行う場合、生体検査後、着床前診断の結果を待つためにも冷凍を要しますが、別サイクルで移植することは、上記の理由からも妊娠率の向上効果があります。
以上に説明したことは、“自己卵子を使用し”自分に移植を行う通常の体外受精サイクルの場合です。
多くの方法論が可能である現代の生殖医療において、“より高い妊娠率を達成する体外受精ケース”は、(1)第三者介入の生殖医療で、(2)フレッシュ受精卵を使用する場合であることがわかっています。第三者介入とは、例えば、卵子提供者(卵子ドナー)からの受精卵を移植する場合や自己の卵子を代理母に移植する場合を指します。このような第三者介入の生殖医療では、採卵のために排卵促進剤を使用した母体の子宮内膜に移植しないため、上記の着床に不都合な条件が適用されません。また、最初に命題に示したように、受精卵の質のみに焦点を置いた場合、フレッシュ受精卵が冷凍受精卵より、優れていることは間違いありません。しかし、近年は、急速冷凍(ガラス化凍結法)の技術が進んでいることから、冷凍に関する大きな懸念を持つ必要がないと、生殖医療も進化してきています。つまり、冷凍された受精卵も、フレッシュの細胞とほぼ同様の(着床の)結果が得られることがわかってきています。しかし、冷凍することにより質が悪くなりえるリスクが極小になっているとしても、二つの過程(冷凍と解凍)で増えるリスクは別に考えるべきでしょう。そのため、やはり生殖医療分野においては、フレッシュ受精卵を使用することが好まれます。
しかし、通常の自己サイクルとして、自己の卵子で同一人物である自分に移植する場合は、採卵のために排卵促進剤を使用したサイクルとは別の時期に移植することにより、本来の潜在妊娠率を確保することができる、という臨床結果は明らかになっており、世界のトップ医療機関では、患者さまに選択肢を伝えるようになってきています。
次回は、今まで説明してきた、最新の性染色体(男女産み分け)と22対の常染色体の着床前診断の総まとめをいたします。
(次回は11月第1週号掲載)

sakura life profile Photo〈プロフィル〉清水直子(しみず なおこ) 学習院大学法学部卒業、コロンビア大学で数学を学び、ニューヨーク大学スターンスクールオブビジネスでMBAを取得。マウントサイナイ医科大学短期医学スクール修了。メリルリンチの株式部で活躍し、2003年さくらライフセイブ・アソシエイツを設立。
【ウェブ】www.sakuralifesave.com/

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