〈コラム〉ケン青木の新・男は外見 第92回

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“パンツ”について その1

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日本ではズボンまたはスラックス、英国ではトラウザーズと言われることが多いのですが、ここニューヨークはイタリア、スペイン系の方が多いので、最も一般的に使用されていると思われるパンツで通したく思います。
男性の衣料品において、ジャケットよりも時代性をより強くアピールできるのが実はパンツなのです。外出している間、上着を着なくてOKであっても、パンツ(ショーツを含む)を履かずにはいられませんよね(笑)。そして、流行は市場全体の動きをそれなりに反映しているものなので、決して無視できないのです。結局、皆さんの多くはトレンドが大好きなのですから。(笑)
新世紀となって早14年、旧世紀末と比べますとやはり新しいモノもたくさん登場しており、それは紳士服の世界でも例外ではありません。背景には新世紀を迎えての時代の大きな変化があり、その一つが若さと健康に対する関心の大きな高まりです。若さには体のシェイプ、姿勢、躍動感などが求められます。さらにもう一つが、男女差など、人類がこれまで経験して来たあらゆるバリア(障害)からの解放を求める心の高まりが上げられるでしょう。
現在、街中でよく見かける細いシルエットのパンツは、こうした時代背景から登場し、市場において多くの支持を得ていると言えます。以前にも細身のシルエットがはやった時代がありましたが、長くは続きませんでした。理由は、細身でかつ動きを妨げないような服作りは、一般消費者向けの大量生産の商品においてはなかなか難しかったのです。生産コスト削減のためミシンを多用した結果、短時間でたくさん縫えるものの、出来上がったパンツは縫い目が固く、どうしても動きづらくなりがちだったのです。そして人々は、普段使いにはゆったりとした動きを妨げないものを履く傾向があったのです。
それを解決したのがライクラ/スパンデックスなどの、いわゆるストレッチ素材でした。そして、さらなるパターンの改良にあったのです。
(以下、次号=9月12日号掲載=に続く)

32523_120089421361491_100000813015286_106219_7322351_n〈プロフィル〉 ケン青木(けん・あおき) ニューヨークに21年在住。日系アパレルメーカーの米国法人代表取締役を経て、現在、注文服をベースにしたコンサルティングを行っている。日本にも年4回出張。

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