〈コラム〉ケン青木の新・男は外見 第103回

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“スーツ”について その3

Print今回から上着のフィットとルックについて、おおまかにですが書いていきたく思います。まずは言葉、そして用語について少し整理をいたしておきましょう。

以前から申し上げていることですが、オーダーメードは純然たる日本語であり、注文服のことを当地では一般にcustom、またはmade-to-order、もしくはmade-to-measureなどと言います。言葉とその意味について歴史的視点を持ちつつ、正しく理解していこうと努めることは極めて大切で、さらに言葉は時代と共に意味が変わっていくことがありますから、ややこしいですね(笑)。

例えばmade-to-orderは、近年においては日本で言うパターン・オーダー(これも立派な日本語です・笑)に近いものを意味することが多くなり、有名店において既製品を試着しつつ、基本的なシルエットに大幅な変更はせず、オリジナルのデザインを生かしながら、サイズの微調整やデザイン、ディテールに変更を加えていく、custom注文服の新しい一形態でありますが、個別に型紙を起こすことはいたしません。故に完全な注文服とは定義できにくい部分はありますが、特定のブランド、お店のブランドのお洋服がお好みであれば、比較的リーズナブルな割増料金で、よりフィットしたサイズ、よりお好みのデザインの服を手に入れることができる手段だと言えるでしょう。

次にbe spokenですが、元来は英国の注文服店において、特定の生地を彼らがぜひ着用してほしい上得意客向けに確保しておくことを意味しました。The cloth is be spoken for Sir 〜という風にです。そして現代においては昔ながらの手仕事そのままに受け継いで来た、最高レベルの注文服であることを強調したい時に使われるケースが多い一方、インターネットビジネスにおいて単純にcustomの現代風オシャレに聞こえる代用語として使われるケースもあり、それなりに注意が必要です。Custom Clothingにおいては必ず個人の型紙を起こす、特に肩、背中のパターンを起こすことがマストなのです。既製服との最も大きな違いがそこにあるのです。
(次回は2月27日号掲載)

32523_120089421361491_100000813015286_106219_7322351_n〈プロフィル〉 ケン青木(けん・あおき) ニューヨークに21年在住。日系アパレルメーカーの米国法人代表取締役を経て、現在、注文服をベースにしたコンサルティングを行っている。日本にも年4回出張。

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