〈コラム〉ケン青木の新・男は外見 第106回

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“スーツ”について その7

000140-0014-000106 copy上着のボタンが取れやすいのは必ずしも全てが縫製の悪いことが理由ではないetc.といった言い訳がましいことを前回(3月26日号掲載)書きました(笑)。洋服のボタンを留める糸は、だいたい麻で出来ており、タコ糸と似ており、さらにロウを効かせてより丈夫で長持ちするように工夫されているのですが、日本でも米国でも、普通には買える糸ではないのですね、やはり専門のお店でありませんと…。さらに言い訳を続けますと、ボタン穴が鋭く開いた状態だったり、ブレザーなどメタルボタンの処理が丁寧でなく、金属のバリなどがありますと、逆にボタンの方が糸を切っていってしまうことがあるのです。それを少しでも防ぐため、いや、遅らせるために特殊なヤスリでボタン穴を滑らかにすることも、ときには僕らの仕事なのです…。

日本人には日本の洋服の着方がある、あるべきなどと言われる方がおられます。西洋の伝統に基づいて形づくられてきた洋服の正しい知識を持たずに自己流、無手勝流を通されるのは誤った考え方です。例えば、西洋人が着物の基本を踏まえないままに、思いつきや感性だけで気ままに着物を着ている姿は、私たちにとって快くは思えないのと同じことなのです。

やはり洋服の基本を身に付けた上で、個性を生かしていくことが大切で、日本の歴史や文化、気候風土にマッチした日本的な洋服の着方、味付けもその中で形づくられていくものなのです。そして正しい知識の追求には終わりはありません。追求をさらにさらに深めていくことで、個々の着こなしの流儀や個性も完成されていくのです。ボタンが取れやすい理由には、実は着方の問題もあるのです。上着のボタンは立って掛け、座って外す。これが基本です。次回はこれについて少し書きます。それではまた。

(次回は4月23日号掲載)

32523_120089421361491_100000813015286_106219_7322351_n〈プロフィル〉 ケン青木(けん・あおき) ニューヨークに21年在住。日系アパレルメーカーの米国法人代表取締役を経て、現在、注文服をベースにしたコンサルティングを行っている。日本にも年4回出張。

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