〈コラム〉中島敏行「言葉のチカラ」第3回

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まず自らが変わらなければ何も変わらない

 ワタミフードサービスへ入社して1年半、東証2部上場を果たしたばかりで急速に会社が成長していく過程を肌で感じながら自らの業務をこなし、良い仲間にも恵まれ、順調に店長になりました。”最年少店長誕生、おめでとう!”と、渡邊美樹社長をはじめ社員や店のメンバーから祝福を受け、期待とプレッシャーの中、都内の店を任されました。
 経営目的の追求と地域1番店を目標に掲げ赴任しましたが、現実は想像以上に厳しいものでした。その店は和民の中でも初期にオープンした古い店舗で、従業員は当時からのベテランが揃い、皆、僕より年上でした。勢いに任せ着任直後から店の改善に着手しました。正直なところ、年下を理由に舐められたくない気持ちが先行していたのかもしれません。その結果、半年も経たないうちに僕の熱意に反し中心メンバーの心が離れ、次第に孤立し、当初の勢いは途絶えてしまい、自信と戦意を喪失し失速してしまいました。周囲からの期待に応えるべくして血気が逸り、全てが空回りしていたのです。
 渦中に行われた社長懇親会に出席した折に、この切迫した現状を社長に打明けると「辛い気持ちを正直にぶつけてくれて有難う。店長としてメンバーさんをどう思っているのか、メンバーさんのことが好きか、相手に振り向いて欲しかったらまず自分が相手と向き合わないと駄目だよ」と、“店を変えたいと思うならまず自らが変わらなければ何も変わらない”ということを痛感しました。被害者意識を抱いていた自分が恥ずかしく、感銘を受けると言うよりも冷静さを失いかけていた自身に気付かされ、とても悔しく反省しました。対人関係において、一見見過ごしがちだけれど大切なこと、凡事徹底することで信頼関係が築かれることを身を持って教わりました。これを機にパラダイムが確立され、会社の成長と共に自分も成長させてもらえたと確信しています。 (次回は7月6日号掲載)

batten_nakajima〈profile〉 中島敏行(なかじま としゆき) 肥後ばってんラーメン オーナー、Magokoro Inc.社長。千葉県出身。経営マネージメントを学び、1996年ワタミ・フードサービス(株)(現WATAMI)に入社。創業者である渡邊美樹氏(現会長)から直接指導を受け、居食屋和民の店長、スーパーバイザーを経て03年W&E Hospitality Inc.へ転職のため渡米。05年に肥後ばってんラーメン店長に着任、10年独立。

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