〈企業トップインタビュー〉JA三井リーシング・キャピタル・コーポレーション 黒澤 淳社長

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米国進出する日系企業をファイナンスなどでサポートする総合リース会社

社名変更し、一層の業務拡大目指す13-08-03_topinterview_kurosawa

JAグループと三井グループを経営基盤とする総合リース会社であるJA三井リース株式会社(本社・東京都品川区)の米国現地法人「三井リーシング・キャピタル・コーポレーション」(本社・ニューヨーク市)が7月26日付で社名を「JA三井リーシング・キャピタル・コーポレーション」に変更した。  1982年にニューヨーク事務所開設以来、培ってきた長年の経験とネットワークをもとに、米国へ進出する日系企業のために、現地での新規設備導入や既存設備の入れ替えなどをファイナンスによってサポート、また情報収集、資金調達、税務・会計メリット活用などのサポートも行っている。
営業として全米各地に自ら出向くという同社の黒澤淳社長に、2008年9月のリーマン・ショック後、景気後退に苦しんだ米国の現状とともに、今後のビジネスの展望を語っていただいた。
◇ ◇ ◇
―御社の事業について教えてください。
黒澤社長 私どもの親会社でありますJA三井リースは、08年10月に三井物産系の旧三井リース事業と、農林中央金庫系の旧協同リースが経営統合した総合リース会社です。私どもはその名前が示す通りJA三井リースの米国現地法人で、旧三井リース事業として1982年に米国に進出しております。業務としましては、主に日系進出企業向けの設備投資などのお手伝いを、リースやその他ファイナンス手法を通じ行っております。
―社名変更に伴い、新たな事業展開はあるのでしょうか。
黒澤社長 従来の日系進出企業向けの業務は引き続き主な柱ではありますが、非日系企業向け案件も積極的に取り組むべく既に動き出しており、米国の同業者や異業種であっても、金融をうまく組み合わせられるようなパートナーとの協業を通じさらなる業務拡大を目指しております。また、今後はJA三井グループおよび日本本社との協業・連携をより一層親密に行っていくことになります。
―御社のサービスを利用するメリットは。
黒澤社長 一般的にリース会社が提供させていただく設備資金は物件価格に対し100%のファイナンス効果が有り、金利も固定となりますので金利上昇リスクを回避することが可能となります。また、投資対象物件以外の担保をご提供いただくことは少なく、銀行融資の借入枠にも影響を与えませんので、手元資金流動性を確保したままでの設備投資が可能で、資金調達ソースの多様化にも寄与します。さらに、リース形態によっては貸借対照表への計上が不要となり、お客さまが減価償却を行うケースや逆のケースも可能となります。(これらは会計制度の動向や物件の特性なども影響しますので個別の検討が必要になります)
―営業に際し、心掛けられていることは。
黒澤社長 この業界は、単なる資金提供にとどまらず、“お客さまのニーズに合ったファイナンス提案をどれだけできるか”ということが非常に鍵となってきます。基本的な例で言えば、お客さまが設備投資を検討する上で、投資後の売り上げスケジュールなどを考慮したキャッシュフローと損益の出方が重要になってきます。要するに、入ってくるお金と出て行くお金というものが当然あって、お客さまから見ても支出は対応する収入が安定化するまで極力抑えるとともに、損益についても計画的に対応していく必要があります。そこをリースなどの手法を活用しながら、お客さまの資金繰りと損益がスムーズに回るよう提案をしています。
―社長はニューヨーク在住何年目ですか。
黒澤社長 今回はもうすぐ3年になりますが、前回は1994年から4年半くらい駐在しておりました。また、8歳から13歳までニューヨーク郊外に住んでいましたのでニューヨークは3回目なんです。不思議とニューヨークとは縁があります。
―世界的に大きな変動があったこの3年を振り返って、現在の傾向はいかがでしょう。
黒澤社長 米国は景気回復傾向がより鮮明に見られますし、雇用情勢もまだ楽観はできないでしょうが、良い方向に向かいつつあると思います。また、新車販売台数などにも現れているように、消費の本格的な回復も期待されています。他方で、継続されてきた金融緩和政策の終息観測から長期金利を中心に上昇傾向が顕著に現れており、一時期の超低金利時代は終わったといえるかと思います。しかし、金利が上昇しているとはいえ、歴史的に見ればまだ低い水準にあると言いえますので、その意味では今、固定資金を活用して中長期の設備投資を行うということは、向こう数年間で見ると、お客さまにとってコスト的に有利に働く可能性が高いといえるものと思っております。実際に私どものお客さまの中でも、金利動向を見据えて、長期固定資金による設備投資を進めている企業が増えています。
―近年、米国での日系企業の盛り返しはみられるのでしょうか。
黒澤社長 リーマン・ショック後、多くの日系進出企業の皆さまが非常に厳しい状況に直面し売り上げが半分以下になった企業も多数あり、その後の東日本大震災やタイの洪水、あるいは急激な円高などの影響も続き、大変な時期を経験されたお客さまはたくさんおられました。しかし、従来から弊社とお取引いただいておりました日本企業で、最終的に本当の意味での経営不振に陥った企業はほとんどなく、逆に苦しい時期に推進した合理化が功を奏し、回復後は最高益を計上したお客さまも少なくありませんでした。そういう意味で、“日本企業で働く人たちは本当にすごい”とあらためて感じました。例えば、米中西部の小さな町に駐在する数少ない日本人が、100人から場合によっては数百人規模の現地従業員を雇い、彼らの雇用を守りながら質の高い物作りを行っているわけです。本当にそんな企業を見ていると頭が下がる思いがしますし、日本人の底力を実感します。そういった日系進出企業を微力ながら今後共ぜひサポートさせていただければと願っております。

くろさわ じゅん 1964年東京生まれ。87年に獨協大学経済学部を卒業し、旧三井リース事業に入社。経理部、国際営業本部を経て、94年にMitsui Leasing Capital Corporationへ赴任。営業として約4年半勤務し帰国。その後、横浜支店、三井物産への出向、ITメディア部、エレクトロニクス部長を経て、2010年Mitsui Leasing Capital Corporation社長に就任。趣味は音楽鑑賞と健康志向の空手。また、無類の愛犬家でもある。
(「WEEKLY Biz」2013年8月3日号掲載)

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