北米最大の日本新作映画祭「JAPAN CUTS」,話題の新作28作品上映へ

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7月26日(水)~8月6日(日)

3年ぶりに全劇場上映

ジャパン・ソサエティー(JS)映画部主催で、7月26日(水)から8月6日(日)にわたり、毎夏恒例、日本の新作映画を集めた映画祭『JAPAN CUTS~ジャパン・カッツ~』を開催される。ニューヨークの夏の風物詩として定着したジャパン・カッツは、コロナ禍では全編オンライン配信や「オンライン+劇場」のハイブリッド形式などで開催されてきたが、今回3年ぶりに全劇場上映の形で復活する。今年で16回目を迎える本映画祭では、さまざまなジャンルの最新日本映画からプログラムを構成し、全29作品を上映する。

『レジェンド&バタフライ』(c) 2023 THE LEGEN & BUTTERFLY Production Committee

『レジェンド&バタフライ』

『流浪の月』(c) 2022 "Wandering" Film Partners

『流浪の月』

12日間にわたって開催する本映画祭では、「Feature Slate」部門17作品に加え、新進気鋭の若手監督作品を集めた「Next Generation」部門6作品、「クラシック」部門1作品の合計24本の長編映画と、5本の新作短編映画を上映。国際プレミア5作品、北米プレミア9作品、米国プレミア5作品、東海岸プレミア3作品、NYプレミア3作品の上映に加え、開催期間中6人の特別ゲストを迎え、レセプションパーティーを開催するなど、盛りだくさんの内容となっている。

時代劇から家族ドラマ、青春物語、コメディー、スリラー、ドキュメンタリーや実験映画まで幅広いジャンルを取りそろえ、「日本映画のいま」を俯瞰(ふかん)する。

CUT ABOVE賞は柳楽優弥さん

映画祭開催前から既に完売作品も続々で話題

オープニング作品は、日本公開時に半年で累計1000万人という異例の動員数を記録した『THE FIRST SLAM DUNK』の東海岸初公開。スラムダンク・シリーズとしては33年ぶりとなる長編アニメ映画で、原作者である漫画家・井上雄彦さんの初監督作品となる本作。東映アニメーションとGKIDSの協力により、全米での劇場公開に先駆けた特別先行上映となる。

『THE FIRST SLAM DUNK』(c) I.T.PLANNING,INC.(c) 2022 THE FIRST SLAM DUNK Film Partners

『THE FIRST SLAM DUNK』

日本映画界に貢献した俳優

注目作を取り上げる「センターピース」枠では、『ターコイズの空の下で』を上映(既に完売)。またジャパン・カッツでは例年、日本映画界へ著しく貢献した監督や俳優の功績をたたえる「CUT ABOVE Award for Outstanding Achievement in Film」(映画への卓越した貢献をたたえる賞)を設けており、今年のCUT ABOVE賞は、同作主演の俳優・柳楽優弥(やぎら・ゆうや)さんに贈られる。柳楽さんは、2004年公開の是枝裕和監督作品『誰も知らない』に主演し、第57回カンヌ国際映画祭で史上最年少(当時14歳)かつ日本人で初めて男優賞を受賞したことから、国際的知名度を獲得した。その後、映画だけではなくテレビや舞台にも活動の場を広げ、商業大作からアートハウス作品まで50本以上の映像作品に出演し、日本を代表する俳優として日本映画界の躍進に貢献してきた。

『ターコイズの空の下の』(c) Turquoise Sky Film Partners, IFI Production, KTRFILMS

『ターコイズの空の下で』

国際的俳優として活動をしてきたKENTAROが初の長編映画として監督した本作は、モンゴルの草原を舞台に日本人青年の成長を描いたロードムービー。日本・モンゴル・フランス合作の国際色豊かな本作を米国初公開するにあたり、柳楽さんとKENTARO氏を特別ゲストとしてニューヨークに迎え、上映後のQ&Aやレセプションパーティーを実施する。(一般向けは既に完売)

『ターコイズの空の下で』のポスター(c) Turquoise Sky Film Partners, IFI Production, KTRFILMS

『ターコイズの空の下で』のポスター

〈作品紹介〉『ターコイズの空の下で』Under the Turquoise Sky
2021年/95分/日本語・モンゴル語上映・英語字幕付
日本、モンゴル、フランス、オーストラリア、チリの国際共同制作映画で、国際的俳優として活動をしてきたKENTAROの初の長編監督作品。甘やかされて育った主人公のタケシ(柳楽優弥)は、裕福な祖父(麿赤兒)によってモンゴルの田舎に送り出される。そこでモンゴル人のガイド(アムラ・バルジンヤム)と出会い、素晴らしい景色と深い謎に包まれながら、タケシが旅を通じて成長していく姿を描く。壮大なモンゴルの大自然の美しさはもとより、誠実な演出、演技、撮影の魅力に引き込まれるロードムービー。

日本の才能ある新鋭監督たちにスポットライトを当てる

若手監督によるインディペンデント長編作品を選出した「Next Generation」部門は、ジャパン・カッツ映画祭におけるコンペティション部門。

映画業界のエキスパート3人が審査員となって、6作品の中から1作品を「Obayashi Prize」(大林賞)受賞作に選ぶ。2020年に亡くなった日本を代表する映画監督・大林宣彦の名にちなんだ本賞は、日本の才能ある新鋭監督たちにスポットライトを当てるために作られた。

また、「SHORT CUTS」と題した短編映画プログラムでは、アニメーションや無声映画へのオマージュ、実験映画含む多彩な構成で、ジャンルに富んだ新作短編映画5作品を上映する。

坂本龍一さんへの追悼作品上映に矢野顕子さんが登壇・あいさつ

本年の「クラシック」部門上映作品は、今年3月に亡くなった作曲家・坂本龍一さんへの追悼の意を込めて、ドキュメンタリー映画『トーキョー・メロディー』(1985)を上映する。フランスと米国で活躍するエリザベス・レナールによる本作は、YMO解散後である80年代半ばの坂本さんの素顔に迫う作品。上映に先立って、本作の要のシーンに登場するミュージシャン・矢野顕子さんが登壇・あいさつ、また本上映のために訪米するレナール監督とのQ&Aセッションを行う。劇場での上映がきわめて稀な本作を、オリジナルの16ミリフィルムで見ることができる。

2007年から続くジャパン・カッツは、ニューヨーク・タイムズ紙からは「ニューヨークの映画カレンダーの毎年恒例の目玉」、ウォール・ストリート・ジャーナル紙からは「ニューヨーク発の最大級の日本映画イベント」と称され、ニューヨークの映画ファンそしてメディアからも広く支持される夏の風物詩となった。

映画祭の詳細はwww.japansociety.org参照。会場はジャパン・ソサエティー内劇場(333 East 47th St, NYC)。

(2023年7月22日号掲載)

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