集夢計画12回「国連Earth Day」

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アーティスト・林世宝「チリも積もれば芸術に」第16回

クイーンズ美術館での「Earth Day」の表彰式

クイーンズ美術館での「Earth Day」の表彰式

2月初めごろ、国連から地球環境に貢献したアーティストとして「Earth Day」で表彰したいと連絡が入りました。国連といえば、1997年に制作した100万枚のペニー平和像を国連本部に、という話がまとまる寸前、台湾と中国との政治上の問題で断念して以来のことでした。

昨年、ペットボトルでクリスマスツリーを作ったことは当コラムでも紹介しました。きっかけは、「ロックフェラーのツリーは樹齢75年の木」に代表されるように、アメリカでは毎年3500万本もの木がクリスマスツリーのために伐採されると聞いたからです。

そこで私は、不要になったものを集めて75年の木に匹敵するようなツリーを作ってみようと考えました。「一本のペットボトル、地球の愛」というキャッチフレーズで、一般の人にボトルを集めてもらうだけでなく、制作にも参加してもらいました。地元の高校生や老人が毎日のようにボランティアに来てくれて、制作現場はいつも賑やかで楽しく、笑い声にあふれていました。

環境保護が叫ばれだしたのは最近ですが、これまで人類は自然を壊し開発を進めてきたのです。環境破壊の代表は戦争です。私の知る仏教の教えでは、「敬天地」「尊重天地万物」と昔から言われているので、自然を守り、物を大切にする考えは特別ではなく、平和を望む気持ちも自然な心の現れです。人間一人の力には限界がありますが、皆の力を合わせると大きな力が生み出されることを、行動アートを通して実感しています。ゴミのような物でも目的に向かって集めると、物と物の間、人と人の間に最も価値あるものを探りあてられるように思うのです。

今回の受賞は、私のアートに参加してくれた皆さんの力によるもので、私一人のものではありません。今後も私の両手から、人の手を借りて行動するアートを続けていくことが何よりの幸せです。

(次回は9月17日号掲載)

林世宝

〈プロフィル〉リン・セイホウ 1962年台湾生まれ。日本に留学中に日展、日仏現代美術展に出展し数々の賞を受賞。その後、渡米し、96年NY大学大学院修士課程を修了。NY現代美術展メディア賞、アジア傑出アーティスト賞などを受賞。世界中から素材を集める、ハート集結シリーズの代表作には「智恵の門(愛知万博)」、「ラブツリー(20万のおしゃぶり)」がある。NY在住。【フェイスブック

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