集夢計画29「希望のツリー:勝利の瞬間」

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アーティスト・林世宝「チリも積もれば芸術に」第34回

ジョージ・サンチアゴ(左)とラブツリー(Ⅲ)発起人のヒロ・能塚(ヒロ・アート・シンフォニー代表)

友人のジョージ・サンチアゴはスポーツプロデューサで、野球の記録映画を作るのが仕事。最近取り組んでいるのは、1960年代にサンフランシスコ・ジャイアンツで活躍したオーランド・セペダなど往年の名選手たちのドキュメンタリー。セペダは、選手時代の怪我がきっかけで、薬物中毒になったり、刑務所に収監されたりした後再起し、自らの経験を様々な奉仕活動に生かし、99年に青少年の模範としてアメリカ米野球殿堂入りを果たし現在も活躍中。

ジョージとは、「偉大な発明と矛盾」(携帯電話を集めてスポーツカーを作る企画)に協力を申し入れてくれたのがきっかけで知り合いました。スポーツとアートで専門は違いますが、記録作りという点では共通するものを感じています。

野球といえば、楽天の優勝、あの勝利の瞬間が被災した東北の人々だけでなく、日本中の人々に与えた力は計り知れません。バッターがボールを打つ音、その様子を巧みな解説で中継するアナウンサーの声、ボールは空に舞い、選手の間をすり抜け、その行方を追いながら必死に塁を進む選手、叫び、歌、拍手、歓声。球場にいる選手と観客、テレビを見ている人、ラジオを聞いている人、皆が一つになる感動の瞬間がスポーツにはあります。極める選手たちが持つ体力と精神力、努力、智恵、勇気、最後まで戦うネバーギブアップの精神がつくり出す名場面。感動や勇気を与える瞬間は動、アートは静。人々にパワーをもたらす感動の記憶、忘れてほしくない栄光の記憶、集団の記憶をジョージは記録映画に、私はアートに込めます。

そんな二人の共作として、ラブツリーの第3弾を来年の完成に向けて計画中です。素材は野球のボール2万個。小さいボールの中には野球の歴史、選手の記録、感動の記憶が入っていて、そのパワーを集めて希望のツリーを作るのが私たちの願いです。

(次回は2月第2週号掲載)

林世宝

〈プロフィル〉リン・セイホウ 1962年台湾生まれ。日本に留学中に日展、日仏現代美術展に出展し数々の賞を受賞。その後、渡米し、96年NY大学大学院修士課程を修了。NY現代美術展メディア賞、アジア傑出アーティスト賞などを受賞。世界中から素材を集める、ハート集結シリーズの代表作には「智恵の門(愛知万博)」、「ラブツリー(20万のおしゃぶり)」がある。NY在住。【フェイスブック

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