〈コラム〉ケン青木の新・男は外見 第53回

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足に関する俗説

53_otoko紳士服飾ビジネスにおいて“日本人体形”または“日本人サイズ”など、日本人のサイズ面の特殊性をことさら煽(あお)ったり強調する人たちがいます。私は無条件には賛成しかねます。米国内にはアジアの血を引く人たちは2000万人以上おりますが、私たちが言うほどにはサイズの問題は生じていません。
今回は靴についてお話します。私たち日本人の足は甲高で幅広と言われてます。本当にそうなのでしょうか? 高級靴作製には、足にピッタリ合わせて格好良く見せるためには手仕事をより増やし、革を木型になじませるため、より多くの時間を費やす必要がありますが、実は日本の量産型メーカーの多くはそのような作り方をしていません。何度もリサーチしての結論を言えば、コーカソイド(白人)に比べて、甲高・幅広の傾向があることは確かですが、ちまたで言われているほどでもないのです。日本の若い人たちには、国内では甲がブカブカで合わず、外国旅行の際、靴をまとめ買いする人たちがいるほどです。
第2次大戦後、日本の某靴メーカーの調査で、日本人の足はフランス人に近いとされました。明治政府においても、西洋式の軍隊や警察を養成するため軍靴が必要で、偶然フランスの指導の下、靴を輸入しましたが、サイズの考えなしに支給するという笑い話のような事実があり、西南の役では、会津出身者が多かった警官たちはワラジに履き替え白兵戦に臨む者が続出したのです。
実は私たちの足は後天的要因でより甲高、幅広となりえます。日本人が武道をはだしで行うことにその大きな理由があるのでは、と考えています。特に空手、剣道、柔道の順に子供のころからの稽古で体を保護するために自然に足に肉が付き、より甲高、幅広となるようなのです。白人にもサーファーやアメフットのディフェンスなど3Eや4Eの人たちもたくさんおります。日本の角界の方々も引退して減量すると、足のサイズが2、3サイズ小さくなります。足のサイズとはそういうものであり、厚くなった足の皮、魚の目やタコなどを削り、整えるだけですぐハーフサイズからワンサイズ違ってきたりするものです。それではまた。
(次回は1月11日号掲載)
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〈プロフィル〉 ケン青木(けん・あおき) ニューヨークに21年在住。日系アパレルメーカーの米国法人代表取締役を経て、現在、注文服をベースにしたコンサルティングを行っている。日本にも年4回出張。

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